深淵用シナリオ−罪−


(このシナリオは2000年3月に行われた第2回京都深淵コンベンション公式シナリオ−髪−を加筆、訂正の上で改題したものです)

<シナリオの概要>

 このシナリオはプレロールドキャラクターを用いたシナリオです。プレイヤー人数は4人となっています。下記のリンク先から各PCの詳細に行けます。これを直接印刷してキャラクターシートとしてお使い下さい。

・復讐者ケイン
・素朴な農夫マーク
・探索者ルード
・少年ショーン

<運命カード>

 このシナリオでは初期に各プレイヤーに渡す運命カードを指定しています。
ケイン:黄の黒剣、紫の指輪、青の青龍、赤の野槌、白の風虎、黒の風虎
マーク:白の古鏡、黒の古鏡、黄の古鏡、青の古鏡、緑の古鏡、紫の古鏡
ルード:黒の戦車、白の通火、黄の青龍、青の海王、黄の風虎、青の風虎
ショーン:白の黒剣、赤の黒剣、黄の原蛇、緑の青龍、緑の野槌、紫の八弦琴

<テーマカード>

 このシナリオのテーマカードは
黄の牧人

信じて待つべし。
いずれ継ぐべきものがここにくる。
です。

<背景>

 この国では、周辺の戦乱にもかかわらず、長い間平和を保っています。それはこの国には「呪われしもの」がいるからです。「呪いは呪われしものを守ろうとする」これがこのシナリオのモチーフです。呪われたものが呪いの苦しみから解き放たれることがないよう、呪いはこの国が戦乱に巻き込まれないよう作用してきたのです。
 今から数100年ほど昔、呪われしものの正体を知ったある商人は、国を守るため、この「呪われしもの」を守ることにしました。そして呪いを持続させるため、罪深きものを代代捧げてきたのです。

<舞台>

 このシナリオの舞台は特に地域、国を特定しません。季節は秋の終わりごろであり、少し肌寒くなりつつあるぐらいの気温です。この町ではある宗派が信仰されていますが(後述)、必要になるまで言う必要はありません。

<オープニングの夢歩きの例>

オープニングの夢歩きの例を次項に示します、参考にしてください。なお、オープニングの夢歩きは通常キャラクターの自己紹介的な役割のために用いられます。なお、初期手札を指定しているので、どのカードを出されても、下記の例の夢歩きからの応用が利くと思います。


(ケインの夢歩き)

白の風虎

我は忘れぬ。
我はあきらめぬ。
我は追いつめる

闇の中声がする
痛い・・・
苦しい・・・
ねえ、まだなの?まだかたきをうってくれないの・・・

あなたは何も答える事が出来ない
彼女を慰められるのは言葉ではないと知っているからだ

闇の中からまだ声がする

ねえ、まだなのケイン・・・

白の風虎

我は忘れぬ。
我はあきらめぬ。
我は追いつめる



(マークの夢歩き)
白の古鏡

我は鏡
汝の過去を愛してあげよう

あなたはこんな夢を見た

あなたは闇の中にいる
闇の中声が聞こえる
それは女の声のような気もするし、老人の声のような気もする
声はあなたに尋ねる

「誰かを助けたいのかい?」

あなたはうなずく

「では、その為におまえが痛みを背負う覚悟はあるかい?」

声は更に尋ねる

あなたが返事をためらうと、クスリという笑い声とともに声が聞こえる

「急ぐ事はないさ、まだ時間はある。ゆっくりと考えるがいいさ」

女の声はあなたにそう告げる

出発の前の晩、あなたはこんな夢を見た

白の古鏡

我は鏡
汝の過去を愛してあげよう



(ルードの夢歩き)
白の通火

我は明かりを捧げ、後続を導く。
闇の中にも、常に道は存在するのだ。

あなたはこんな夢を見た

闇の中あなたは歩いている
暗い洞窟の中あなたは歩いている

どうしてこんなところを僕は歩いているのだろう
あなたは疑問に思う
母さんんを探しているのだ
心の中で声がする

そしてあなたはとうとう古ぼけた扉の前に立つ
あなたは思う
この奥に母さんがいるんだ

あなたは扉に手をかける
そこであなたは目がさめる

ふとこんな文句が頭に浮かぶ
「闇の中にも、常に道は存在するのだ」

白の通火

我は明かりを捧げ、後続を導く。
闇の中にも、常に道は存在するのだ。


(ショーンの夢歩き)

黄の原蛇

  希望?
夢?
それはいったい何を意味するというのだ?

こんな夢を見た

吹きあれる風の中
たたきつけるような雨の中
その小さな明かりは光をもたらしていた

絶望のような嵐の中
恐怖のような豪雨の中
今にも消えそうなその小さな明かりは
それでもたしかにそこにあった

あなたは、こんな夢を見た


黄の原蛇

  希望?
夢?
それはいったい何を意味するというのだ?




<導入部>



導入部はPC全員がそろい全員の行動指針がはっきりするまでをあつかいます。

<シーン1 依頼(ケインの導入シーン)>

   シナリオ初日は各PCの状況説明および、行動指針の明確化が重要となります。明確化が一番行いやすいのはケインです。
 ケインがこの町の酒場にいると、一人の屈強な男が声をかけてきます。「姉の仇を探しているって言うのはあんたかい?」
 男はケインに仇の情報を教えてやろう、と持ちかけてきます。条件は二つです、もし囚われの身となってもこちらの情報を漏らさないこと、仇をケインの弓で暗殺するということです。詳しい話を聞くと、この町一番の商人であるジェイが人身売買を行っていること、商品のリストの中にエミリの名があったこと、男はジェイに敵対する組織のものであることを教えてくれます。
 さらに男は、暗殺のチャンスを探るため、ルードという名の男を召使として屋敷に潜入させていることを教え、そのあと「もし疑っているんなら自分で調べちゃあどうだい?」ともちかけます。

<シーン2 新しい召使 (ショーン・ルードの導入シーン>

他の3キャラは商人ジェイの家に集まることになります。


(NPC演技指南1商人ジェイ)
 このキャラは、このシナリオの最大の敵役であり、魅力を持った人物でもあります。このキャラは基本的には善人です。他国出身である彼は、幼少のころより祖国の戦乱とともに成長してきました。たとえかりそめのものでも平和が望ましい、と彼は考えているのです。事実彼はもし自分に死期が近づいたらわが身をいけにえにささげる気でいます。彼は交易商人であり、武器も含め他国との交易で財をなしています。交流こそが平和への道と信じているのです。
 ただし、多少潔癖なところがあり、娘のなした事は許せなく思っています。そして、その罪は償わせなければならない、と決めています。

 ジェイの館に当初いるのは料理人2人、メイド3人、執事1人、召使1人(ショーン)とメアリ(ジェイの娘)です。召使は一人(盗賊団の仕業で)やめたところです。新しい召使(ルード)がこの日の夕方に来ることになっています。


(NPC演技指南2娼婦メアリ)
 このキャラはこのシナリオの最大のヒロインです。扱うのにかなり苦労するかもしれません。
 彼女は幼いころよりなに不自由なく暮らしてきました、4年ほど昔に町である男と知り会うまでは。その男に夢中になった彼女は家を出、その男とともに暮らす道を選びました。それが彼女の不幸の始まりでした。
 その男はろくで無しであり、ろくに働く事もせず、彼女に暴力をふるうこともたびたびでした。ついには彼女は町門で街娼としてたち、男の酒代を作る事さえ強要されるようになりました。
 そんな生活は男がチンピラとの喧嘩で死んだ、いまから1年ほど前まで続きました。男が死んだ後、彼女は父の家に戻りましたが、父はそんな彼女を冷たく扱いました。彼女に父がこの館に伝わるものの真実を告げ、次のいけにえを彼女にするといった時、もうこの世界に絶望していた彼女は力なくうなずき、それを受け入れました。
 彼女を演じる上で大事になるのは2面性です。ショーンに対する時、普段の彼女は良き姉であり母親的な女性として接します。彼女の真実の顔は退廃的で虚無感に満ちたものです(彼女の手首にはナイフの傷跡があります)。もしだれかが彼女に生きるよう説得しようとすれば彼女はこう言います。「この腐った世界に行きつづける意味があるの?」、「じゃあ見せてよ、あたしに見せてよ。もしこの世界に生きる意味があるって言うのなら、それを見せてよ!みんな口先だけの偽者じゃない・・・」
 もう、おわかりですね。少年としてのショーンの最大の難関は彼女に何を言え、何を見せられるのかです。序盤と中盤との切り替え、情報をいつ与えるか?に注意してください。


   昼頃メアリの部屋で彼女と談笑していたショーンは、執事に呼ばれ新しい2つの仕事を任されることになります。ひとつは今日夕方くる召使(ルードのことです)の面倒を見ること、もうひとつは、先ごろ辞めた召使の変わりに地下に多量の食物を持っていくことです。
 地下には(それまでは立ち入りを禁じられていました)、鉄格子の地下牢と、頑丈な鉄の扉の部屋がいくつかあります。彼に与えられた仕事は鉄の扉の下部の小窓から10数人分の食物を差し入れ、明朝食器を回収することです。
 3つの注意が与えられます「中を見てはいけない」「話し掛けてはいけない」「話し掛けられても答えてはいけない」です。

(地下室の中にいるもの)

 地下室の中にいるものは碵矍睫です。外見はどろどろの肉汁に人間のパーツが無秩序にくっついたもの、といった様相です。取り込まれた個々のもの達の意識は残っており、会話もできます。またそれとは別に、全体としての意識も持っています。
 この「もの」に関しての特記事項として、準備がなされていない人間には見えない、ということが挙げられます。これが見えるための条件を具体的にまとめると、ルードがこの防御の結界を破壊するか、何かがいるという確信と供にこの部屋で夢歩きで達成値15以上を出す必要があります。いつ見えるのか?がこのシナリオのキーポイントです。

<シーン3 館へ (マークの導入シーン)>

マークの登場シーンは有益な情報を得られず町の酒場で途方に暮れているところを、たまたまマークの話を聞きつけたジェイに声をかけられるところからスタートします(実際に情報収集の行程を行わせる必陽は有りません、声をかけられた、というところからシーンをスタートさせてください)。ジェイは鏡に興味を持ち、マークを館に誘います。彼の家に伝わる古文書から何か分かるかもしれない、と言う訳です。  その夜、ジェイの口から鏡の力について知らされます(ただし、射撃武器反射に関する事だけです)。その後、ジェイはマークにその盾の能力を活かして、護衛になってくれないか、と持ちかけます。3日後にこの国の国王がこの町を訪れ狩りを行うに際しての護衛というわけです。

 また、鏡のことを説明する際、「呪い」というものの概念についてもジェイの口から語らせてください(例:ジェイ「結論から言うと、この鏡は呪われてなどいないよ。もっとも、ある意味では呪われているともいえるのだがね。」マーク「それはどういうことですか?…」)。またこのシーンでは、できれば3人のPCを同席させてください。(なお、鏡のことを説明するときにこのシーンを入れられなかったら、適宜後半部に挿入してください)

<呪いについて>

 「呪い」の本質とは,人が「それを呪いだと信じる」ことにあります。何か因縁めいたことが起きたとき、人が「もしかしたらこれは呪いではないか」「これは呪いかもしれない」「これは呪いらしい」「これは呪いに違いない」とかんがえたときそれは呪いとなります。逆に呪いをかけられたと人が信じ、そのショックで病気になったとしたらそれも呪いです。呪いが事実であってもなくても、彼が病気になったという呪いの現象があるのですから。マークにとっての鏡は呪いそのものといえます。ある現象が「呪い」としんじられた時、それは呪となり人を呪い。「祝福」と信じられれば人を助けるのです。(拙作のシナリオ−糸−を参考にしてください)

<シーン4 初恋の終わり/出会い>

 その日の夕刻、ショーンはメアリの部屋に呼ばれます。彼女は地下で何があったか?ショーンが危害を受けていないか等々地下の事について詳しく尋ねた後、自分がしばらく後にこの屋敷を離れる事をショーンに告げます。
 そして「いままでありがとう。あなたがいてくれて本当に良かった、いつまでもあなたの事を見守っているからね。」ということを言います。

 夜、ケインが町を歩いていると、町を流れる川の橋の上で、思いつめた顔をした女(メアリ)を見かけます。普段なら気にもとめないのでしょうが、メアリは姉のエミリにどことなく面影が似ているため、すこし気になったのです。その女は思いつめた表情をしていたかと思うと、川に発作的にといった様子で身を投げます。周囲にはケインしか人影はありません、ケインはおそらくメアリを助けることになるでしょう、これがメアリとケインの初めての出会いです。
 助けられた後、メアリはケインには目眩がしてふらついたのであって、自殺をしようとしたのではない、と言い張ります。いずれにせよケインはメアリを家まで送ることになるでしょう。その過程でケインはメアリがジェイの娘であることを知るはずです。



<本編>



 本編で扱っているのはシナリオ2日目および3日目です。つまりケインによるジェイ襲撃および、メアリを地下にささげる日の前日までです。この部分で中心となるのはキャラクター間の関係づくりとクライマックスに向けての動機づけです。
 さて、すでにご想像されているとおり、本編はいささか流動的な展開となります。ほとんどのPCにすでに行動指針が示されているはずです。プレイヤーの動き主導でマスタリングしてください。

1、シナリオの展開および夢歩き

 シナリオの焦点になるのは、いつ地下にいるものの正体がわかるか、です。時期がこなければ見えない、という事は忘れないでください。ありえる情報源は、・そのものから直接・後述の夢歩きによって・メアリから・ジェイから・鏡の夢歩きによって…等でしょう。どれを用いる場合でも、序盤では中途半端にしか教えないでください。一番扱いやすい情報源はショーンが食事をとどけるときに扉の中から聞こえる声でしょう。この時何を伝え何を伝えないかである程度展開のスピードが操作できます。
 また、夢歩きは頻繁に行い、情報を整理させてください。夢歩きで行うべきことは・各キャラに関係するNPCの感情描写・呪いの正体のほのめかしおよび・契約(後述)です。  また各キャラにつき最低一回は、後に行われる選択(呪いを放置して平和を守るか、戦乱が起きるのを承知で呪いを開放するか)のほのめかしをしてください。特にケインについては姉が行方不明になった時の記憶、ルードについては母親を探す過程で知った盗賊団団員たちの不幸なおいたちの記憶を描写しつつ、ほのめかしを行ってください。それらの描写がなされた後、碵硴矍硴軈硴碌眈という声がするのです。

 また詳しい事は終幕部を参照して欲しいのですが、このPC達はシナリオの冒頭部より、ある存在に見られています。その存在はマークを除くPC(ショーンかルードの可能性が高いです)が何か望みを持ったとき、夢歩きでこう尋ねてきます。
「君の望みは何かね?」
「その望みは、たとえば、君が何かを失っても、ということかね?」
 呪われしものの正体が知れるのは、この問いの後であるべきです。またこの問いは、対象のPCを変えて、何度行ってもかまいません。
 ショーンに対する場合、恐らくメアリの力になりたいとかそういった望みでしょう。ここで彼女についての真実を明かす、というのもいいでしょう。ルードであれば、刻印が与えられます(ここで封印の破壊者の運命を自在に使いこなせるようになります、さらに魔族の刻印の運命が与えられます)。後のシーンに有効に利用してください。ケインについては、各マスターに任せます。

2、PCに対する基本方針および謎とき

<ショーン>

 ショーンに関して言えば、行動の焦点になる点は・地下にあるものへの恐怖・メアリとのかかわりの2点です。特にメアリについては扱いを多く取ってください。忘れてはならないのはメアリはショーンの説得には絶対に応じないということです。ショーンには大人(つまりは他のPC)の助けが必要なのです
 他にあり得る展開としては、他のPCとの絡みで起こるものがあります、おもに地下のものの声からそれは発生するでしょう。例えばナリスの声が聞こえたらショーンとしてはルードに関わらないわけにはいかないでしょう。その他の部分についてはプレイヤ−に下駄を預けましょう。

<ケイン>

 ケインの方向性は2つ有ります。一つはいわゆる普通のTRPGにおけるシティアドベンチャーのような形でシナリオに関わってくるという形です。ジェイの事、館の事、メアリの事など様々な情報をプレイヤーが思いつく限りの方法で調べさせ、与えてください。特に序盤の最後でメアリと知り合うきっかけを提供しているので、ここからルードやショーンたちともからみが出来るかもしれません。もしプレイヤーが積極的に動いてくれたならば、メアリに積極的に接触し、情報収拾しようとするかもしれません。理想的な展開としては、メアリに対し姉の面影を投影してメアリを救おうという方向に動いてくれることもありえるでしょう。

 2つめは姉が本当はなんで死んだのか?ということです。ケインはケインが覚えていたくないので忘れていますが、ケインの姉は一時期彼を養うため街娼をやっていたことがあります。実は姉が行方不明になったのはこの時のいざこざが尾を引いて、その結果ジェイのもとへと売られたというのが真相です。
 彼の記憶の中で姉は美しい聖女のような女性であり、街娼であったということの記憶は抑圧され消えさっています。また、姉の追跡を早期にあきらめたのも、姉の真実に触れるのを無意識が避けたせいです。彼にとって最も忘れたい記憶は、姉の職業のため町の子らにいじめられ、姉に非難の声を浴びせてしまった時のことです。
 ジェイの調査の過程で再び姉の事について聞く事になります。たとえば昔彼をいじめた子らに再会し謝罪される(例:あの時はすまなかったな。おまえの大事な姉さんのことでおまえを辛い目にあわせて)等です。早い段階でPCの記憶にある姉の像と実際の姉の像に食い違いがある事をプレイヤーに伝えてください。特筆すべき事としては、姉に関する決定的な情報は彼の耳には聞こえないという事です、無意識が邪魔をするのです。終盤が近づいてきたらマスターはプレイヤーにこう尋ねてください。「真実を知る準備は出来ましたか?」この問いにプレイヤーが首肯するまで真実は告げられません。もしメアリとのからみが上手く展開していれば、ケインは真実に向き合えるだけの強さの裏づけを得られているでしょう。
 ジェイに関する調査と、それに付随してもたらされる姉の情報、この2点が中盤のケインの重用ポイントです。おそらくプレイヤーに要求される技能は、このキャラが最も大きいでしょう。下手をすれば浮いてしまいかねないので、メアリをきっかけにするなどして、ルードやショーンを中心に他のPCとうまくからませてください。
 このキャラに関しては、「ねえ、まだなのケイン?」というだけで序・`中盤は誘導を自由に行えるということも頭に入れておいてください。

<マーク>

 実はこのキャラクターに関してシナリオ上期待されているのは、このシナリオの事件を通じて夢占い師もしくは魔導師(おそらく通火か翼人か古鏡)への道を歩むということです。他のキャラが悩んでいる時、重要なシーンにある時、故郷の弟についての夢歩きをした後、マークはなぜかその場に同席し(実は鏡によって強制的に鏡面転移させられているのです)その場のキャラに関わる事になります(ちなみに鏡面転移はプレイヤーが動かない時の為の奥の手です、プレイヤーが自主的に動いてくれるのなら、こんな手は使わなくてもいいです(もちろん、面白いと思えば使ってもいいですが))。その過程の中でマークは様々な真実を知り、悩むでしょう。その時、オープニングシーンの夢歩きに登場した声が再び問いかけてきます、「人を救うために痛みを背負う覚悟があるか?」この問いに首肯するとこのキャラには鏡の真の力(他人と夢歩きを共有できる)を使いこなせるようになり、夢歩きの技能が3となり、さらに鏡に対する縁故が夢歩きの際使用できるようになり、その上で91−2「魔族の刻印(母なるものウープロ(後述))^命があたえられます。この時ウープロに関する神話知識もすべて得ます。プレイヤーに神話のコピーを手渡してください。この鏡に封じられていたのはウープロの理性です。いまマークはそれをどう扱うかを委ねられたのです。

<ルード>

 このキャラは、最も危険なキャラです。ルードが動かなければケインも動けないし、ショーンの個性も殺されます。要求される技量は多くないものの、失敗したら最も悲惨な事になります。
 このキャラについては、母に関する夢歩きを効果的に使ってください。行動の選択はかなり多いので、何をしていいかわからないという事はないはずです。それと押さえておいて欲しいのは、「扉を開けるという」イメージに関する夢歩きです。このキャラの持つ能力がなければ地下のものの呪いは解けないのですが、そのことをほのめかしてください、場合によってははっきりとそういってもかまいません。
 母親に関する情報源としては、ショーンが地下でというのが最も重要でしょう。声はルードに元気でいてくれと伝えて、とショーンに言います。もちろんルードが自主的に単独で地下に潜入する事も有り得ます。

3、NPC

<ジェイ>

このキャラは、単純な悪役にせず、表面的には善人として扱ってください。ショーンやルードにも親切です。

 また、事情を知らない町の人は彼を尊敬すらしています。
 このキャラに関しては、適宜(二日目の午後が良いと思います)以下のイベントを起こしてください。

 ジェイがルードとショーンを供にして(ケインにも目撃させてください)この町のはずれにある小さな祠を訪れます。この祠はこの町で信仰されている母なるものウープロの祠です。

(母なるものウープロ)
 この国で信仰されている女神です。500年ほど前のこの国の領主のの妻であり、夫亡き後はその任を引き継いだとされます。
 戦乱で夫とすべての子供を失った彼女は「この国は私の子供。私がいる限り、この国を私は守って見せる」と誓いました。死後、神(それがどのような存在であるのかは伝えられていません)に願いを聞きとげられ、この国を守る女神となった、と伝えられています。
 実は、彼女は「呪われしもの」の核です。データー的には彼女は影響値76の魔族であり、属する星座は原蛇です。

 ジェイは月に一度はこの祠を訪れ、「懺悔」を行うのを習慣としています。もし盗み聞きするならc私は罪を犯しました。私は今までたくさんの人を手にかけてきました。また今度もメアリという女を手にかけようとしています…B
 外で待たされている間に通りすがりの町の住人からか、もしくは行く途中にジェイからこの国の神話については語らせておいてください。後の伏線です。

 また、2日目の晩、狩りの事をジェイはショーンとルードに伝え、倉の清掃等を命じます。

<終幕>



<概要>

 このシナリオの終盤はジェイの狙撃以降です。プレイヤーが走ってさえいれば、彼らに流れの主導権を渡してしまいましょう。襲撃以降の展開についてはあえて記述しません。予想されるシーンの注意点と、シナリオ全般に関することをここでは記述します。

<襲撃>

 まともに行われれば、このシーンはケインがつかまるという風に落ち着くはずです。矢には毒をぬってあります。襲撃シーンの描写を特に細かくする必要はありません。矢をつがえ、ねらいをつけた、というところからスタートしてかまいません。
 ちなみにもし襲撃が成功してしまった場合、その日の晩に行われるはずだった儀式はおこなわれないことになります。この場合地下から「あれ」があふれだしてきて、無差別に人を取り込もうとします。

<監禁>

 襲撃シーンがケインの失敗に終わったら、屋敷の地下に彼は監禁されます。ケインとルードがうまく接触できていれば、ここでやっとPC全員が一堂に会すことになります。

<マークの説得>

 PC達にとって最大の難関はあの盾です。マークをどう説得するかというのはシナリオ展開において、かなりのウェイトを占めると予想されます。しかしこういうシーンはどうしても間延びしがちなので、冗長になりすぎないよう注意してください。なお、展開的にはマークは故郷に逃げ帰ってもかまいません。

<「呪われしもの」との対決>

 このシナリオのクライマックスです。すべての伏線を使い切ってください。このシーンで特記すべきことは、「呪われしもの」はルードが「扉」を開けない限り殺せない、ということです。アクションシーン中ルードが夢歩きをする機会を積極的に与え、「扉」のイメージを語ってください。ルードが夢歩きの中(母の声が扉の奥から聞こえる、といった夢歩きがいいでしょう)でその扉を開けられれば、呪われしものにとらわれていた人々の思いが開放されます。
 この時点でこの場にいるPC一人一人に時計回りに夢歩きを行わせてください。ここで行われる夢歩きは囚われていた人々の物語であり、語られるたびに彼らの魂は開放されます。カードメッセージを元に即興で作ってください、マスタ−の好みの出る部分ですのでこれ以上の例は挙げませんが、いくつか事前に準備しておくべきです。別に今までに出たNPCの物語を別の側面から語る、と言った形になってもかまいません。指輪のカードで夢歩きが行われたとき(一順目以降で)、呪われしものの誕生(母なるものウープロに関する神話)に関する物語が語られます。その後に残った本体を弓で打てば、消滅します。単純に白兵戦でも破壊できないことはありませんが、その場合いずれどこかでこのものは復活します。白兵戦を行う場合行ってくるのは影響値攻撃です。
 また、・ケインが妄想を自覚している・マークが鏡の力を解放している・ルードが母のことを知っている3点の課題が達成されているときは下記に記すイベントが発生します。

  <呪われしものの誕生に関する物語>

 神話の時代、戦乱の中で子供達を失ったウープロという名の母親がいました。彼女は悲しみ、自分の無力を嘆きました。
 あるとき一匹の蛇が彼女に尋ねました。
「力がほしいのか?」
彼女は答えました。
「はい」
「それは復讐のための力かね?」
「いいえ、復讐のための力などいりません」
「では、愛するものを守るための力かね?」
「いいえ、私の愛するものはすべて失われてしまいました」
「では何のための力かね?」
「私がほしいのは、罪を償うための力です」
「罪?、どんな罪かね?」
「愛するものを、国を、守れなかった罪です」
「・・・・わかった、では望みをかなえてやろう。おまえの罪が償われるその日まで、おまえは罰を受けつづけるだろう。おまえの罪が償われるその日まで、おまえの国は静寂に包まれるだろう。おまえの罪が償われるその日まで、おまえの国の民は安らかに眠れるだろう。」
「それこそ我が望むところ」母は答えました。

<過去へ…>

 上記の物語が語られた後、先ほど示した課題が3つとも達成できている場合は以下のイベントが発生します。

 PC達4人は上記の物語が語られた後、目の前に一匹の蛇がいることに気がつきます。蛇はこう尋ねます。
「彼女を救いたいかね、永劫の呪いから開放してやりたいと思うかね?」
「たとえばそれは、そのために、君達が「今」を失ってもかね?」

 PC達がうなずくと、ショーンの魂は過去へ飛ばされます。今目の前には泣き崩れるウープロが居ます。ショーンは理解します。あの蛇に会う直前の彼女が今ここにいるのです。

 ショーンは彼女に何を言えるでしょうか?
 ショーンは彼女に何か出来るのでしょうか?

 それはプレイヤー次第です。一つだけ言っておきます。少年というテンプレートは深淵最強のテンプレートです。それを忘れないでください。
 いずれにせよ、これはこのシナリオの根幹に関わる部分です。プレイヤーがだした答えが何であってもそれを尊重してください。ショーンのプレイヤーのためにここで休憩をとってもいいでしょう。


<ルール的な補足>

 上記の神話や夢歩き中に語られる蛇とは、ルール的には「蛇の大公ブーレイ」です。ですが、そんなことは一言も漏らしてはいけません。ただし、描写の参考になるので、ルールブックの世界の書は目を通しておいてください。

<エンディング>

エンディングは各マスターに任せます。ただ、忘れてはならないのは、もはやこの国は平和ではいられない、ということです。特に、本編中に蛇に望みを語ったキャラクターがおり、過去へ…のイベントが発生していない場合そのキャラの夢歩きでは、戦乱に覆われた故郷の描写が行われます。

一例だけショーンのエンディング例をあげておきます。


(ショーンのエンデイングの夢歩きの例)
青の八弦琴
「語り残さん。これら全てが夢で終わらぬために」


君は故郷の村のベッドの上であのもうひとつの秋の日々のことを思い出していた。

あのあと、気がつくと君は故郷の村にいた。呆然とする君に向かって、妹が声をかける。
「おにいちゃーん。どうしたのよー?朝ご飯なくなっちゃうよー」
家の中ではにこやかに両親が君を待っている。
「遅いじゃないか、ショーン。先に食べ始めるところだったぞ。」父が言う。
君は返事も出来ず、ただうなずいた。

その後、だんだん事態がわかってきた。あのことはなかったことになっているらしいのだ。ウープロは呪いによって国を守ることを選ばず、こうしてこの国は不安定ながらも平凡な日々を過ごしている。歴史は修復され、こうして今君はここにいる。恐らくルードやマーク達も今ごろは故郷にいるのじゃないだろうか、彼らは無事家族と平和な生活を得ているのだろうか?

あのあと、父に連れられて町に行く機会があり、一度だけメアリを見かけたことがあった。当然、君の事なんか覚えていなくて、幸せそうに恋人らしき男と歩いていた。思わず君は声をかけようとしたけれど、彼女の幸せそうな姿を見ていると、それができなかった。

そのあと、だんだんと本当は起きなかったあの秋の日々の記憶が薄れていく。かわりに本当は起きていたはずの村の日々の記憶が君の中で大きくなりつつある。いつか君も全てを忘れてしまうだろう。

君は本当は起きていたはずのさまざまなことと、本当は起きていなかったはずのさまざまなことを思い、あのもうひとつの秋の日々を思い、ほんの少しだけ、泣いた。


                       (…fin)


<マスタリングに関する全般的な注意>



 深淵の場合、キャラクターの知っていることとプレイヤーの知っていることの格差というのは常に問題になる事柄です。キャラクターならしないであろう馬鹿なことをプレイヤーが行う、といった状況を避けてください。たとえば襲撃シーンなどでは、弓を構えた、ぐらいのところから描写して何ら問題はありません。重要でないシーンをプレイヤーにさせる、というのも同じ意味で良くないです。適度にマスターがまいていってかまいません。やって面白くないシーンは飛ばしてもいいのです。

<序盤の展開フローシート>

オープニング→ケインの登場シーン(依頼)→ショーン、ルードの登場シーン→マークの登場シーン→館の地下へ(ショーン)→呪いのレクチャ(下線部はプレイヤーが退屈しない程度に適宜切り替え)

<本編イベントリスト>
・ 夢歩きによるブーレイとの遭遇
・ 祠での懺悔
・ メアリの本心を知る
・ 地下にいるものとの遭遇

<NPCリスト>

メアリ:いけにえの女性、ジェイの娘
ジェイ:本シナリオの敵役、町一番の豪商
エミリ:ケインの姉、故人(?)
ナリス:ルードの母。故人(?)

<このシナリオの参考にした作品>
山田玲司「アガペイズ」小学館
小松左京「くだんのはは」講談社
朱鷺田祐介「槍の白馬」HJRPGマガジン連載
飛火野耀「もうひとつの夏へ」角川書店
カミュ「ペスト」新潮社