第4回京都深淵コンベンションシナリオ 瞳  



 


(仕様)
このシナリオは深淵にあまりなれていないプレイヤー3〜4を対象に作られたシナリオです。プレイ時間は4〜5時間程度となるでしょう。前半部は充分に時間を取りプレイヤーにルールになれさせるようにしてください。

なお、このシナリオのテーマカードは黄の牧人「信じて待つべし、いずれ継ぐべきものがここに来る」です。

 また、シナリオの理解が深まると思われるため、出来ましたらサプリメント「追憶」のp107〜108に目を通しておいてくださるようお願いいたします。

(PC紹介)
 以下にPCの紹介を行います。直接コピーしてキャラクターシートとして用いてください。なお、3人で行う場合はセイルをNPCとするかリーンを抜いてください。リーンを抜くとシナリオの展開がかなりダークな方向へ向かいますので、基本的にはプレイヤーが3人の場合はセイルをNPCにする事を推奨します。

 ちなみにこれはマスター情報ですが、ダリルの縁故の待ち人とはセイルのことです。
・ダリル・カズン
・リーン・フォレスト
・ディック・クレント
・セイル・カズン
 
(各PCの夢歩き例)

以下には各PCのオープニングの夢歩きを示します。なお、この夢歩きを使用する際は初期カードを

ダリル:赤の翼人、緑の戦車、赤の指輪、黒の通火、白の原蛇、青の八弦琴
リーン:赤の原蛇、黄の青龍、赤の古鏡、黒の古鏡、白の風虎、黄の海王
ディック:白の黒剣、赤の黒剣、紫の指輪、緑の野槌、緑の原蛇、紫の古鏡
セイル:白の青龍、黒の黒剣、青の青龍、黒の野槌、白の牧人、紫の牧人
にしてください。この場合はどのカードを出されても例の夢歩きが使えます。

ダリル・カズンの夢
 
時折、考えることがある。
俺の生き方は、本当にこれで良かったのだろうか?

ユラス男爵領は決して豊かな土地ではない。
土は痩せ、気候は厳しく、魔物も多い。ユラス領とはそんな国だ。
この国が平和と秩序を保ってこられたのは、我ら黒騎士団の活躍のおかげ

反乱は血で祝で粛清し、病魔に侵された村を焼き払ったこともある。
この国の平和はそれら、流された血のおかげ。

それでも良かったと思っていた
守れるものを守る、所詮俺にできるのはそれだけなのだ
妻が自分のもとを去ったとしても、それも仕方ないと思っていた
人に理解してもらえるとは思っていない

でも、最近時々
傍らに誰もいないことが、むしょうにさみしくなる

きのう夢を見た
夢の中、俺の手は血まみれだった 


リーン・フォレスの夢(プレイヤーとの対話で行ってください)

山道を歩いていて、後ろから声をかけられた

「リーン先生、リーン先生じゃありませんか?」

そこには少し前町で助けてやった青年がいた。

「おお久しぶりだなあ、どうしてるんだ…」

そこまで言いかけて、あなたは声を止めた。彼の手にはナイフが握られているのだ。

「先生、先生は言いましたよね、自分らしく生きていれば幸せになれるって?」

あなたはうなずく。

「全然駄目だったじゃないですか!、自分らしき生きようとしたって、全然駄目だったじゃないですか!」そういって、その青年はいような目をしてあなたに向かってナイフを振りかぶってくる。

ディック・クレントの夢

久しぶりに、ルティアの夢を見た

夢の中、ルティアは悲しそうな顔をして
ぼくの方を見ていた

大丈夫だよ、
もうそんな悲しそうな顔をすることはないんだ
お兄ちゃんがきっとおまえをよみがえらせてあげる

目がさめた
また、あの声が聞こえた

この声にしたがっていれば、いつかルティアに会える
そんな気がした

セイル・カズンの夢

またあのいやな夢を見た

母さんが、僕に向かって、ナイフを振り上げているんだ
憎悪に満ちた手で、僕を見てる母さんの目

母さん、僕が何をしたっていうの?

「この悪魔の子め!」誰かが言ったそんな言葉が聞こえる

そうなの母さん?
僕が悪い子だから、そんな目をしてるの?

その時、母さんの瞳にうつる僕の姿が見えた
僕の瞳はまがまがしい赤に染まっていた

いつもこの夢はここで目がさめる

母さんがいなくなったのは僕のせいじゃない、
そのはずだ、そのはずなんだけど…




(概要)

このシナリオは基本的にはユラス男爵領辺境のある開拓村が舞台のシナリオです。そこにPC達が導かれ、真実が明らかになるまで、がこのシナリオの内容です。なお、季節は春の始めです。

 このシナリオをやる上で覚えていて欲しいことは、「おそらく深淵世界における北原地方でもっとも豊かな国はユラス男爵領である。」ということです。悪名高い領主による圧政は、反面この国に秩序と平和をもたらしているのです。

 以下の記述は基本的にはセイルがNPCであるという前提で記されています。セイルがPCである場合はプレイヤーの選択に従うといった形でプレイングしてください。セイルの人格がのっとられるのに判定を行う必要がありませんが、もし白セイルが黒セイルの存在を意識しているのなら、意志判定で15以上で支配に抵抗することができます。

(導入)

このシナリオの導入部は、各PCばらばらに始まります。この節で扱うのは全PCが舞台となる村に集まるまで、です。記述は時間順になっています。

・リーンの導入

 リーンの導入はオープニングに引き続き傷つき倒れるところから始まります。なんとか傷ついたものの逃げ出し、川に流されたとか、そういうシーンで始めてください。
 状況を理解してもらった後、こういう夢歩きを入れてください

GM:夢の中、何かの声が聞こえる。「答えよ!おまえの望みは何か?」

これにどう答えてもそこで目がさめ、舞台となる村の少年セイル(後述)に助けられ、彼の村に運びこまれたことに気がつきます。目がさめた時リーンは驚きます。セイルが死んだ弟そっくりだったからです(ちなみに聞こえてくる声はリーンの無意識下からの声であると解釈してください。リーンの心は彼が自らの生き方を省みる事を要求しているのです)。
 彼はそこで看病され、しばらく静養し体力を回復しました。聞いてみるとセイルは母をなくしたばかりで一人暮しだといいます。しばらくこの地にとどまりリーンの仕事を手伝うことになるようもっていって下さい。回復した頃に村長から頼まれるといったシーンを入れるといいでしょう。幸いセイルの住む村は辺境の開拓村であり、仕事はいくらでもあります。当面は農作業を手伝うようになるでしょう。また、セイルは毎夜悪夢にうなされています。セイルがうなされている声でリーンが目覚めるといったシーンを入れてください。

セイルとリーンが親しくなるように仕向けてください。

・ダリルの導入

 セイルとリーンのシーンから数週間が経過し、ダリルのシーンになります。

 ダリルとディックは連れ立って舞台となる男爵領辺境の開拓村を訪れます。最近このあたりによく魔物が出没するという情報があり、家畜の被害が頻繁にあり、一人の村人の被害が出ているため、その調査/解決に来たのです。ディックは辺境の情勢に詳しいので道案内も兼ねダリルに雇われています。
 村を訪れた時、ダリルはその村の少年(セイルです)を見て驚きます。昔彼の妻レイラに贈った宝石のついた首飾りをセイルがしているのです。セイルがNPCである場合は、母の形見のロケットに会った肖像画からダリルの顔を知っているセイルも、ダリルの顔を見て橋って逃げ出します。

 村人に聞くと、レイラは一年ほど前より行方知らずになっていることがわかります。村では魔物に襲われた、ということになっています。

 セイルは父が母を捨てた、と思っていますので、ダリルに対しては心を開こうとしません。無理に会おうとすれば平手打ちのシーンぐらい入れてもいいです。「母さんが死んだのはあんたのせいだ!」、こういう台詞もいいですね。

 なお、もしリーンがディックを見たなら、リーンに夢歩きさせてください。夢の中リーンはルティアの「兄を助けてください、魔のものの誘惑から助けてください」という声を聞きます。またディックの剣に着いている宝玉とリーンの首飾りの宝玉は似ている、と伝えてください。

・ディックの導入

 その日の夜、ディックは風の中の声に導かれ村外れを訪れます。するとそこには雰囲気のずいぶん異なるセイルがいます。セイルは「宝玉に導かれしものよ、力が欲しいか?愛しいものをよみがえらす力が?」と尋ねてきます。セイルは妹をよみがえらす条件として自分の儀式の手伝いをする事を条件にします。毎夜この場所を訪れ、自分の言うとおりに手伝うように、と言うのです。自らの力の証明としてセイルはディックの目の前で死んだ虫をよみがえらせます。


序盤は リーンが川に流されるシーン→ダリルとディックが会うシーン→セイルとリーンが出会い親しくなるシーン→ダリル達が村に着くシーンという順で行うと良いでしょう。

(真相)

先にこの物語の真相を明かしておきましょう。

 ダリルの妻セイルが彼を捨てたのは、彼についていけなくなったからでなく、宝玉に呪われたからです。ダリルが妻に送った宝石は実は呪いの宝玉であり、それを持ったものは夢の中で魔族「赤い目の侯爵スゴン」と出会います。夢の中、スゴンの子を孕まされてしまったレイラは自分が夫の重荷になるのを避けるため、彼のもとを去ったのです。

 たまたま知り合いがいた辺境の開拓村にまぎれこみ、日々を過ごし、そしてセイルが生まれました。レイラは「生まれたばかりの子には罪がない、私がこの子を立派に育てて見せる」と決心し、セイルを育てました。

 それから13年経ちました。レイラの試みは半分だけ成功し、半分失敗しました。彼女は我が子を心優しい少年に育てることには成功したものの、息子の血に潜む魔力が彼の心を蝕んでいるのには気がつかなかったのです。成長する中で彼の心は優しい息子セイル(白セイルと仮にしましょう)と魔族の僕セイル(黒セイルと仮に名づけましょう)に分裂してしまっていたのです。白セイルは黒セイルの存在を知りませんが、黒セイルは知っています。

 黒セイルの存在を知ったレイラは旅の戦車のまじない師の助力を頼み黒セイルを封印しようとしましたが、敗れ逆に殺害されました。黒セイルは、レイラを殺した山奥の洞窟に自らの祭壇を築きました。
 無意識下ではレイラに自らの分身が手を下したのを知っているために、白セイルの体の支配力は弱まり、黒セイルは今ではかなり自由に体の支配権を奪うことが出きるようになっています。セイルは翼人の刻印(白濁した瞳、黒セイル時のみ)を3ポイント持っており、恐怖、大地の鎖の切断、死の手触りの呪文を使えます。

 黒セイルはこれ幸いとスゴンの本体を自らの体に降臨さすべく儀式を始めることにしました。手始めにもう一つの宝玉をもつ男を僕として呼び寄せました。もちろんスゴンに死者をよみがえらす力などありませんが、アンデッド化(世界の書p64死せる下僕)することはできます(虫に対してしたように)。
 レイラを殺した洞窟に築いた祭壇の影響で、洞窟の周囲には深淵の気が漏れ出しておりそれが付近の動物を汚染しアンデッド化しています。開拓村周辺に出没する魔物とはこれとスゴンの手下である骨の猟犬(世界の書p64)です。汚染された動物のデーターは世界の書p13のデーターを流用してください。

・導入の主眼

導入部における主眼は各PCのこのシナリオの目的をはっきりさせることです。それは以下のようになります。
ダリル:妻の死の真相を明らかにし、セイルと和解する

リーン:セイルやディックの悩みを解決してやる 

ディック:セイルに従い妹をよみがえらせる もしくは セイルの正体を探る

・序盤における情報
ここまでのところでプレイヤーに渡さねばならない情報は以下のとおりです。

ダリルに関して
・セイルは自分の息子である
・レイラはこの村で半年ほど前から行方不明となっている
・この村の周辺では半年ほど前よりしばしば魔物が目撃されている

リーンに関して
・この村は開拓村であり、しばしば魔物に襲撃されている。
・誰かがリーンに救いを求めている
・セイルは毎夜悪夢にうなされている

ディックに関して
・セイルはディックのものと同じ宝石を持っている
・セイルはなにか魔のものに通じる存在らしく、妹をよみがえらす力を持っているらしい

(本編)
本編の展開は流動的です。とりあえず日中はダリルこの村の周辺に出没する魔物がどこから出現しているのかさぐるという任務がありますので、それに従事することとなるでしょう。
 初日に村に骨の猟犬がさまよいこんで来て、農作業中のセイルを襲うというイベントを起こしてください。このイベントがきっかけでダリルとリーンが知り合うことができるようになるでしょう。リーンは武術の腕もある程度確かですので、うまくすれば村の外の探索にもついていくことができるようになるでしょう。

 本編はプレイヤー全員が真相に気づき、復活しようとしているスゴンの洞窟に向かうまで、がその内容です。なお、スゴンの洞窟は結界に守られており、洞窟の位置を知っているものか戦車の刻印を持っているもの以外には見つかりません。


このシナリオはPC達の関係作りが最も重要な要素です。可能な限り決定的なことが起きるのは先に延ばしてください。

・ダリル

ダリルに関しては3つの行動指針がありえるでしょう。@妻を捜す(まだ行方不明なだけですから、もしかしたら生きているかもしれない、と思うでしょう)Aセイルと和解するB魔物の出現地点をつきとめるです。

 @についてはセイルから聞くことが第1の指針です、他に始めての犠牲者がレイラであるため、魔物を探っていけばレイラの事もわかるかもしれないという指針もあるでしょう。
 情報収集を行えば、村人か、レイラがいなくなったちょうどその直前に、怪しげな旅のまじない師がこの村を訪れていたことが聞けます。まじない師が逗留していた村外れの小屋には魔術書等の荷物が残っています。魔術書を見ればこのまじない師が戦車の技を見につけていたことがわかります。また、スゴンの記述があるところに折り目がつけられています(世界の書のスゴンの記述のコピーを手渡してください)。これらの情報を得るためには4時間魔導書を読むことに時間を割く必要があります。
 その他有効と思われる行動をプレイヤーが提示したら適宜対応してください。

 Aについてはリーンが仲介せねばどうにもなりません。次の節を読んで下さい。リーンが仲介するように、マスターから誘導しても良いでしょう。セイルからリーンが相談を受けるとかすれば、自然とそういった展開に持っていけるでしょう。
 またセイルが赤い目をしていたのが近所の人に何度か目撃されています。不安に思った村人がダリルに相談するというシーンを入れてもいいでしょう。

 Bについてはやみくもに歩き回るだけでは絶対に真相にはたどり着きません。探索でランダムにカードをめくり翼人のカードが出れば足跡等のてがかりを見つけますが、それも途中で見失ってしまいます。これによって魔法の結界の存在に気づくかもしれません。骨の猟犬や混沌に侵された獣をみれば敵の正体に気づくかもしれません(判定値18)。そうすれば結界が張られていることにも気づくことにしてかまいません。

・リーン

 リーンはディックやセイルの相談役という役割をこのシナリオでは与えられています。ただし、このキャラにはその前に自らの過去を吹っ切るという関門があります。リーンが上手く動ければディック達の相談に乗ってやれるようになり、ディックやセイルが救われる確率が高くなります。逆にリーンが悩みっぱなしであるならば、ディックはおそらく救われないでしょう。
 リーンが吹っ切れるシーンを入れるのは、リーンのその後の言葉に説得力を持たしたいが故です。


 さて、吹っ切れるまでの間にこのPCに関して特筆すべきことは、黒セイルからの夢の中での囁きかけです。キーワードは「あなたはなんのために生きているの?」です。生きる意味を見失った青年に生きる意味を与えてやる、この悪魔的な誘惑がリーンというPCの面白さです。くりかえしこの言葉を使ってください。そもそも人を導くべき通火の呪い師が自らの生きる意味を見失っている、このPCのキーポイントはこの部分なのです。過去の傍観者の記憶のシーンや「おまえはうれしかったんだろう、人々に頼られるのが。本当はおまえは他人を救いたかったんじゃなく、他人からの感謝の声が聞きたかっただけなんだ、この偽善者め!」といった声を常に夢歩きの冒頭に入れるようにしてください。この声に勝てなければ、ディックやセイルを救う資格はリーンは持てないのです。

他のPCがらみの夢歩きは、通火の場合自ら能動的に夢歩きできますので、マスターサイドから提示する必要性は少ないでしょう。ルティア(ディックの妹)やレイラ(セイルの母)の「それでも救われた人だっているわ」という声を聞かせても状況が錯綜して面白いでしょうね。

 ある程度展開が進んで、それでもなおリーンが悩んでいるようであれば以下のシーンを入れてください。後述する退魔師がおとずれて来た後ぐらいが良いでしょう。

 リーンは村外れにセイルに呼び出されます。そこにはいつもの雰囲気のセイルがいて、こうリーンに語りかけてきます。

「ねえ、リーンさん。一つ聞きたいことがあるんだ。
リーンさんは、いったい何のために生きているの?

(間 プレイヤーに何か答えさせましょう)

うそだね。
本当はリーンさんも知ってているんでしょう?
生きてることに、意味なんかないってことを。

それがつらいんでしょう?
それが苦しいんでしょう?

おいでよ、
ぼくがリーンさんに、生きる意味を教えてあげるよ」

言葉の途中から、セイルの雰囲気は異なったものになります。目は赤くなり肌は白くなります。
 言葉が終わると、セイルは倒れ白セイルに戻ります。この時のことをセイルは覚えていません。
 これ以降もしリーンがセイルを監視/幽閉しようとしたら、セイルは恐怖の呪文を使い脱出します。
 リーンが黒セイルに従うようであれば、ディックと同様に僕として使われることになります。

・ディック

 昼はダリルに従い、夜はセイルの儀式の手伝いをするといった形になります。夢歩きでは妹に「邪悪な存在に身を委ねては駄目」とでも言わせて下さい。
 夢歩きで上手く誘導すれば、スゴンの正体について自ら探ろうとするかもしれません。しかし、もしプレイヤーが動きづらいようであれば、セイルの命令でリーンを仲間に入れようと暗躍したり、儀式のためにいけにえの羊や子供をさらうといったような事をさせましょう。初日は羊を、二日目以降は女性をさらうように命令されます。二日目には退魔師が来ているはずですので、「ちょうど良いのがいるじゃないか、あれをさらってこいよ」と言わせても面白いでしょう。
 あまりにも動きづらいようであれば、リーンをディックに絡ませるように持って行って下さい。後述のレイラの日記をディックに発見させるとか、ダリルのところで述べた退魔師の荷物を彼に見つけさせるというのもいいかもしれません。スゴンの正体をそれとなく知らせ、その上での選択を迫るわけです。夢歩きで妹の幽霊の声で導き、それら真相に近づけるアイテムのところへ誘導しましょう。まあ、スゴンの手下として動かすだけでも十分だという気もしますが。
 ちなみに、ディックが裏切ろうとしたらセイルに刺されます。それも良い展開になるでしょう。


・全PCに関連した情報

 各PC固有でない展開としては二日目の昼過ぎに旅のレインという名の退魔師がこの村をおとずれる、というものがあります。行方不明の兄弟子を探してこの村に来たのです。なにもしなければ村を訪れ去るだけですが(頼まれもせず報酬もないのに魔物退治をしようとはしません)、助力を請われば村にとどまります。白セイルを殺さずに黒セイルのみを封印するには彼女の助力は不可欠であり、彼女無しではこのシナリオは悲劇にしかなりません。彼女は村にとどまることになれば魔物の出現地や死んだ呪い師のことを調べ始めます。

 ディックのところにも書きましたが、最も決定的な情報になるのはレイラの日記です。基本的にはこの日記は誰の手に入ることもありえます。リーンの手に一旦入ってリーン経由でダリルの手に渡るというのが最もドラマ的に盛り上がる展開でしょう基本的にはこの日記には開拓村での大変ではあるがそれなりに幸せな日々が綴られています。セイルの成長する様子や風の噂に聞いたダリルの近況なども時折記されていたりします。特に目を引く記述としては以下のようなものがあります(以下の記述をコピーしてプレイヤーに渡しても良いでしょう)。

日記の最初:とうとうあの人を置いて出てきてしまった。きっとあの人は悲しむだろうな、本当はさみしがりやの人だから。そう思うと、本当につらい気持ちになる。いっそ憎んでくれたらいいのに、「俺を見捨てたあばずれ女」って、でも無理だろうな、あの人の事だもの。きっとさみしそうな顔をして少し泣くだけなんだろうな。
 でも、私も泣いてちゃいけない。自分で決めたことなんだもの、あの人に迷惑をかけないために。

セイルが生まれたあたり:とうとう生まれてしまった。この子の顔を見た瞬間、私の迷いは消えた。多分、私は間違っているんだろう。きっとこの子は生きていてはいけないんだろう。でも私は決めた。私はこの子を守って見せる。何があろうとも、この子と一緒に生きていく。

2年ほど前:最近良くあの子は夜うなされている。時折記憶も飛んでいるようだ。赤い目をしているのを叔父さんが見たとかいう話も聞く。あの子の中で何かとあの子が戦っているのだろうか。

1年ほど前:今日村に旅の方が来られた。諸国を旅して魔物を退治しておられる方らしい。これは偶然なのだろうか?だとしたら、私はこの偶然を感謝すべきなのかもしれない。
(日記はここで終わっている)
 

 基本的にこのパートの情報はだれがどういう形で手に入れるのかはわからない、という形の情報ばかりです。このシナリオの場合情報収集はゲーム性を重視して、うまく情報を得られるよう努力したプレイヤーには報いがあるようにマスタリングしてください。

(結末)

クライマックスは洞窟でセイルが自らの肉体にスゴンの本体を降臨さそうという儀式を行うシーンです。ここまでに各PCの態度は決定しているでしょうから、あとは各PCの選択に任せましょう。
 なお、ディックがまだセイルにしたがっているのなら、儀式の前に妹と対面させてやろうといわれます。儀式の前にセイルと分かれ一人で村外れで待っていると、ゾンビとなった妹に襲われるのです。

 洞窟には幽体状のスゴンがおり、PCたちに襲い掛かってきます。これを倒し、奥の祭壇に眠っているセイルの中の魔をレインによって封印すれば、このシナリオはハッピーエンドを迎えます。

 エンディングに関して特筆すべき点が一つだけあります。セイルがPCの場合、黒セイルに和解を呼びかけるという展開が考えられるということです。特にリーンが上手くPC達の相談にのってやれている場合、セイルが黒セイルに「一緒に生きていこう」と言う、という展開は充分にありえるし、ストーリーとしても非常に美しいものです。この場合はそれを認めてもかまいません。



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