第3回京都深淵コン公式シナリオ −青−


     
<はじめに>

このシナリオは深淵に慣れた1名のプレイヤーと深淵にあまり親しみのない3名のプレイヤー、計4名のプレイヤーを対象に作られた、キャラクター構築済みのいわゆる構造型のシナリオです。
プレイヤーの中で一番深淵について詳しい人にメジナンのキャラクターを担当していただくようにしてください。マスターが不慣れな場合メジナンのプレイヤーにシナリオを読んでいてもらい、サブマスター的にプレイしてもらってもよいでしょう。

<注意>

このシナリオは基本的には一本道の分岐のほとんど無いタイプのシナリオです。キャラクターの設定段階において各々のやるべき課題はすでに明確になっていますので、特にマスターサイドから誘導等を行わずともシナリオの記述に従って展開は進むはずです。

このシナリオを行うに際し、描写を適切に行うことに重点をおき、プレイヤーが各PCの設定を十分に表現できるようにマスタリングしてください。

<概要>

このシナリオは2部構成になっています。前半部はPCたちが駅馬車に乗りあわせ知りあいとなり、とある黒剣の魔導師を訪ねるまで、後半部は危険な怪物の跳梁する森の奥に薬草を取りにいくまでを扱います。なお、白の翼人と赤の海王のカードは抜いておいて手元に持っていてください。テーマカードは青の海王「遠く離れても海は一つ。波はいつか届くだろう。」です。

<舞台>

この物語の舞台は、北原のオルタティア北部の国境付近ユスラの森周辺が舞台となっています。季節は秋の初めごろです。下記よりPCの紹介をします。プリントアウトして直接プレイヤーにキャラシートとして渡してください。なお、この地域に関する細かい設定を知る必要はありません。

・狩人ノイス・レヴァリィ
・黒剣のまじない師アル・レイラス
・伝書士ジェス・ヴォーリス
・夢占い師メジナン・クレイグ

<導入>

オープニングの夢歩きは、PCの自己紹介の意味合いがあります。各キャラの設定がよくわかるように行ってください。下記にその具体例を示します。

<ノイス・レヴァリィの夢>
赤の野槌
この場所こそ我が故郷。
これだけは決して忘れない。

昔の事を思うといつも後悔する
なぜもっとあの時、アンナに優しくしてやれなかったんだろう
あの、アンナが元気だった最後の夏。今、思えばあれが最後のチャンスだったんだ

海に連れて行ってあげれば良かった
はるかなる水平線の向こう
海の青と空の青がとけあったような、どこまでも透き通ったブルー
昔アンナはそれが好きだと言った事があった

山も良かったかもしれない
泳ぐ魚が見えるような透き通ったきれいな小川
その水を飲んだ時のここちよさを、アンナにも教えてやりたかった

でも、本当はどこでも良かったんだ
ただ、アンナと共にすごせる時があれば

夜になるといつも思う
なぜ、あの時…

赤の野槌
この場所こそ我が故郷。
これだけは決して忘れない。

<アル・レイラスの夢>
青の海王
遠く離れても海は一つ。波はいつか届くだろう。

力がほしかった
あの時僕に力があればユリーシャに薬を買ってあげられたのに

知恵がほしかった
あの時医術の知識がもっとあれば、ユリーシャを治療できたかもしれないのに

自分の無力さが憎かった
なぜ、僕は弱っていくユリーシャを、見ていることしか出来なかったんだろう

ユリーシャの墓の前、花を持ったあなたは
ずっとそこに立ちすくんでいた

青の海王
遠く離れても海は一つ。波はいつか届くだろう。

<ジェス・ヴォーリスの夢>
黒の指輪
我が名前を遠くより呼ぶものは誰ぞ?


変な夢を見た
旅をしていて、老人に話しかけられる夢だ

もし、そこを行く旅のお方、一つ教えてほしいのじゃが

はい、なんでしょうご老人
私にわかることであれば、なんでもお教えいたしましょう

ありがとう、若い旅のお方
では一つ尋ねるが
この道はどこに通じる道なのじゃろうか?
海に通じる道なのじゃろうか?

ええ、海にも行きますともご老人
ずっと行けばいつか海にたどり着くじゃろう

ほう、ありがとう、若いお方。
ではこの道は山には通じていないんじゃろうか?

いいえ、山にも行きますともご老人
歩きつづければ、いつか山にも通じるでしょう

ほう、歩きつづけてさえいれば、
海にも山にも道は通じておるんじゃね

ええ、歩きつづけていさえすれば
海にもつくでしょう
山にもつくでしょう
どこにだって道は通じておりまする

変な夢を見た
意味はわからない

黒の指輪
我が名前を遠くより呼ぶものは誰ぞ?

<メジナン・クレイグの夢>
緑の野槌
耳元に囁くものあり。
これもまた夢なりや?

朝起きると、声が聞こえた

「お願いがあるんです、占い師様
兄を、兄を助けてください。

兄は迷っているんです。
悩んでいるんです。

どこまでも深い迷いの中、
深淵の奥底に沈み込んで行こうとしているんです。

どうか
どうかお願いです、夢占い師様」

声は聞こえてきた時と同様
唐突にやみ、部屋は静寂に包まれた
あなたの脳裏には、ふと街道を行く馬車のイメージが浮かんだ

あなたは旅立つ準備をはじめた

緑の野槌
耳元に囁くものあり。
これもまた夢なりや?

<初期手札> もし、前述の夢歩きをそのまま採用するなら、PCの初期手札を以下のようにしてください。この状態に初期手札をしておけばどのカードをオープニングに使われても、先の夢をそのまま使用できます。

ノイス:赤の野槌、紫の指輪、赤の指輪、紫の古鏡、黒の黒剣、青の牧人
ジェス:黒の指輪、白の通火、黒の通火、青の戦車、白の原蛇、白の黒剣
アル:紫の原蛇、黄の原蛇、緑の原蛇、黄の黒剣、青の海王、白の風虎
メジナン:白の古鏡、青の原蛇、緑の野槌、赤の青龍、黄の牧人、紫の牧人

<導入>
PC達は黒剣の魔導師ヨムの館のある森の近くの村まで行く馬車に乗りあわせます。目的地まではあと3日ほどかかります。馬車に乗りあわせているのはPC達4人とリーシアです。  オープニングの夢歩き後はリーシアが発作を起こして苦しむ、というシーンからスタートしてください。アルは治癒師ですから治療をしてくれるでしょうし、これをきっかけにPCたちは知り合いになれるでしょう。

<序盤>

 初日はPC達が知り会いになる、ということに重点を置いてください。馬車の御者が話しかけてきたり、といった以上のイベントを起こす必要はありませんし、PCたちが自主的には話をするならそれすら行う必要はありません。夜には互いの身の上話をしたり、メジナンが占いをしたり、といったようなシーンを入れてください。身の上話でヨムの話題が出たらメジナンに知性で判定をさせてください、成功すればヨムが両親の知人であったことを思い出します。
2日目の朝から、リーシアの体調が悪く咳こみがちになります。昼まえより、御者がPC達に話しかけてきます。森を迂回するため馬車は山間の道に入っていく予定になっていたのですが、どうも道が崩れ通れなくなっているらしいのです。道の復旧には一週間ほどかかるらしく、御者はいったん町まで戻ろう、と提案します。
しかしながら、リーシアの体調が悪いため、ノイスは先を急がざるをえなくなるはずです。ここまでの展開がうまくいっていればPC達は知り合いになっているはずなので、森を抜けるのに同道しよう、と言ってくれるはずです。この森は後述するように風霊犬ジュダンの支配下にありますので、彼の下僕の風の猟犬たちが出現します。そのことを御者の口から警告してください。
森を抜けるためにはゲーム内時間にして5時間ほどかかります。1時間毎に山札からカードをめくり、それが風虎のカードであったら風の猟犬が出現します。また、それとは別に森を抜ける直前に猟犬の襲撃があります(猟犬の襲撃が発生している場合はパスしてください)。

 ・風霊犬ジュダン
 ジュダンはこの森の奥に封印された魔族菫色の公女フェレスの監視のため指輪の女王によって配置された風の猟犬です。聖域を侵すものが出ると飛んできて、警告を与え、聞き入れられない場合は攻撃します。

能力値 12/4 生命力 24 精神力 24 行動値16 防御点4
技能2/回避6
行動パターン
1〜5:鉤爪 判定値4 効果値3 防御点3
6   :突風 判定値4 効果値1 (対象は全員)


 戦闘を行うのでここまででシナリオ開始より1〜2時間が経過しているはずです。ここで休憩を取るのも良いでしょう。
 序盤はPC達が知り合いとなること、プレイヤーがルールになれるということを重視してください。戦闘をはさむのもそういう意味です、ですので戦闘で致命的な被害は発生させないよう注意してください。

<中盤>

 中盤で扱うのはヨムの館での出来事です。ちなみにまさかヨム氏と戦闘しようなどというばか者はいないと思いますので、あえてヨムのデータ−は記述しません。

 館は平屋建てで周囲に民家はなく森のはずれに立っています。館では各々のPCたちとヨムとの会話がメインの展開です。以下にその内容を記します。

・ジェス・ヴォーリス
 彼の話を聞いた後、ヨムはユスラの森の奥に生える薬草があれば治療できる、と告げます。

・ユスラの森 森の大公タンローズの娘、菫色の公女フェレスを封印する森。その最深部には様々な花が常に(冬でも)咲き乱れ、珍しい草花が見られるという。だが、封印を守る猟犬が存在するため危険な場所でもある。

・ノイス・レヴァリイ
 親子の話を聞いた後、ヨムはリーシアと二人きりで話をさせてくれ、と言います。二人でしばらく話した後再びノイスを招き入れ、ユスラの奥地の薬草を取りに行くことが必要である、と伝えます。
 実は、ヨムの見立てでは彼女はすでに助かりません。延命治療ならできますが、それが限界です。ヨムにそう告げられたリーシアは、考えたすえに、父との思い出が作りたい、とヨムに伝えました。ヨムはユスラの森の中央部、フェレスの館周辺の花園のことを伝え、そこまでの小旅行を彼女に与えることにしたのです。

・アル・レイラス
 世間話をした後、ノイス親子の旅に同行するように命令します。これは卒業試験である、と伝え、「黒剣を学ぶものは翼人を知らねばならぬ」と最後に言い添えます。

・メジナン・クレイグ
 メジナンとは彼の両親について思い出話をした後、運命カードを用いて会話をします。まず、白の翼人「死は正しき終わり。終わり無くば節度もまた無し。」のカードを出し、「リーシアの状態はこうなのだ」と言います、そのあと「そこでわしはこうしてやりたい、と思っておる」と赤の海王「嵐に荒れた海も時がすぎれば、全てを飲みこみ、静かとなる。」のカードを出します(他のプレイヤーには見せないで下さい。なお、無粋なことは承知の上で解説をすると、リーシアはもう助からないので思い出を与えてやりたいのだ、ということをヨムは言いたかったわけです)。その後、彼らを見守ってくれと頼みます。

 こうして、ユスラの森に舞台は移ることとなります。

 中盤部に関しては、今後の各キャラの方向付けが重要になってきます。何をすればいいのか?がプレイヤーにわかるようにする、これが重要なポイントです。夢歩きについては最後にマスタリングガイドという項において解説します。

<後半>

 後半は館を出てから、ユスラの森の中央部フェレスの館までです。なお、ヨムからもらった護符、により猟犬の襲撃は後半部では発生しません(時間が余るようならしてもいいですが、避けた方が無難です)

 目的地まではリーシア体調のこともあり、徒歩で3日ほどかかります。このパートで行うことは2つ、です。中盤部で書いたように、すでにリーシアは死を覚悟しています。ヨムの治療とアルの看護により、この旅はリーシアにとって久しぶりに体調が良くくつろげる時間となります。リーシアとPC達との間に関係を築くこと、それが行うべきことの一つ目です。
 二つ目は、全ての森の闇に潜む魔族"根の侯爵サラドナム"の影、をちらつかすことです。この魔族はノイスに命と引き換えに願いをかなえてやる、とささやきます(娘の病を治してやる、とささやこうとはしません、そこに注意してください)。クライマックスにおいてノイス迫られる選択を暗示させるようにしてください。

・根の侯爵サラドナム
星座:牧人
召還値77
影響値8

出現形態:隠された切り株から伸びる巨大な生きている根
魔力:植物の支配、森の声、大地の門(それぞれ牧人の魔法参照、おそらくこのシナリオでは使いません)
地割れ:この魔族は自身から77mの距離までに地割れを起こすことが出来る
武器:木の根 判定値8 効果値2打 防御4 硬度20 行動値18

解説:サラドナムは森の暗部を代表する魔族であり、陰謀に長け人を破滅に追いやることを望んでいる。


 以下に各キャラごとの考えられるイベントを挙げていきますが、重視すべきは各キャラの"らしさ"を引き出すようにすることです。


・ノイス
 このキャラに関しては上記にあるとおりサラドナムの誘惑をちらつかすこと、が重要になります。まず"本当に病気は治るのだろうか?"という不安や、妻が死んだ時のこと等を夢歩きを通じて描写し、その後誘惑をささやきかけてください。
 リーシアのイベントでこのキャラに関係するものは、起こさなければいけない、というようなものはありません。「ねえお父様、ここはきれいなところね。またいつかこんなところに旅行にこれたらいいな。」等の台詞をちりばめてください。リーシアがこのキャラに伝えようとしているのは、感謝の気持ちです。それを忘れないで下さい。

・ジェス
 このキャラについては、伝書使である、ということから、この旅の後で父に手紙を渡してくれ、とリーシアに頼まれます。下記の手紙を二つ折りにして中身が読めるように(かつ他のプレイヤーに見えないように)ジェスのプレイヤーに渡してください。


 お父様、今までありがとう。私、お父様の子供で本当に良かった、と思っているよ。



 この手紙の内容は、ジェスのプレイヤーには見えるように渡してください。このイベントを起こすのは2日目の夜頃、が良いでしょう。
 自然とこのイベントを起こすためには、それまでの経過でリーシアに彼の素性を話している必要があります。各地を旅している彼の話をリーシアが聞きたがる、というようなところから話を振るのがいいでしょう。

 なお、"ねえ、ジェスさん。海って見たことある?どんなものなの?私海を見たことないの。いつか見たかったなあ。"というようなシーンを入れておくと最後のフェレスの登場シーンが映えます(一面の菫色の花畑がフェレスの登場シーンです)。

・アル

 まず、ヨムの指示により毎朝夕に治癒の呪文をかける必要があります。次にこのキャラに伝えなければいけないのは、リーシアの感謝の気持ちとリーシアの面影にユリーシャの姿を重ねてしまう、という情報です。「ねえ、なぜアルさんは魔法を勉強しようと思ったの?」とかの台詞をリーシアに言わすのも重要でしょう。
 夢歩きにおいては"黒剣を学ぶものは翼人を知らねばならぬ"というヨムの台詞を最後に言うようにしてください。

 なお、サラドナムの誘惑をこのキャラに対してしかけるのも面白い展開です。「おまえは無力だ。また昔のようにその娘を見殺しにしようとしている。おまえは力が欲しくはないか?おまえの師匠のような詭弁でない、本当の力を」ぐらいの台詞が面白いでしょう。 ・メジナン
 このキャラはベテランが担当しているはずです。こちらからわざわざイベントを起こす必要はありません。他のキャラのところに偶然居あわせる、このキャラについてはこういう扱いをしてください。(マスタリングの負担を下げる意味もあります。このキャラはほっておいても動けるはずですので、このキャラにさく労力を他のキャラに向けましょう)
 また、サラドナムの誘惑からノイスを守る、ということもこのキャラには重要になります。意志力の即決勝負においてサラドナムに勝てればそれができたことになります。

<クライマックス>

 このシナリオのクライマックスは、フェレスの館の前、花園の手前です。ここでリーシアはノイスに旅の間ずっと隠していた"あのこと"を言おうとします。ここでノイスに夢歩きを発生させてください、サラドナムが最後の誘惑をしかけてきたのです。
 正直、ここでプレイヤーがどういう選択をするかは私にも読めませんが、ここはマスターサイドからは誘導せず、プレイヤーの選択にしたがってください。もし、誘惑をはねつける選択を行った場合、サラドナムとの戦闘が発生します(蛇足に思われる場合は行わなくても良いです)。サラドナムの生命力(または精神力)に30以上ダメージを与えた時点でフェレスが介入し(声が響くだけ、でいいでしょう)この戦闘は終了します。フェレスは森の大公タンローズの娘であり牧人の魔族に命令をすることが出来るのです(まあ、プレイヤ−に教える必要のない情報ですが)
 この戦闘はかなり苛烈なものになります。正直フェレスの介入がなければ、PCの戦力では勝てないと思います。30以上、と上記では書きましたが、適当なところで切り上げる必要が出ることも十分ありえます。

 戦闘が終了するとラストシーン、フェレスの花園に舞台はうつります。一面見渡す限りの菫の花園、その花園の中に美しい女性が立ち、PCたちを見つめています。

菫色の公女 フェレス
召還値:52
影響値:5
魔力:このシナリオでは使いません

解説:彼女は森の大公タンローズの娘であり、神々に家族を惨殺された彼に残された最後の家族です。父を助けるため自らも魔族となりましたが、生来病弱であったため大した魔力を持てず、森の下級魔族としてひっそりと暮らしました。
 魔族達が封印される時、神々はタンローズを封印する変わりに、娘のフェレスを封印しタンローズに忠誠を誓わせました。今も彼女は虜囚としてユスラの森の最深部の花園でひっそりと過ごしています。
 なお、この森で起きるすべてのことを彼女は知っています。


   もしジェスと海の話をしているのなら、一面に広がる菫色の花園は見たときリーシアはぽつりと"海・・"とつぶやきます。海を見たことのあるものにとっては菫色は海の色とは程遠いのですが、たしかに深い青の色は海を連想させるのかもしれません。

、歓迎の言葉を述べた後、"これが必要なのでしょう"とジェスに紫の花弁を持つ花をわたします。
 また、フェレスには大した魔力はありませんが、人の記憶を消す、ことが出来ます(正確にはその効果がある薬草を持っています)。リーシアはノイスにそのことを告げ、私のことは忘れて幸せになって、と言います。(もちろん従うかどうかはプレイヤー次第です。参考までに言っておくと、テストプレイにおいて娘のことを忘れる、と選択したプレイヤーはいません)。
 ここでエンディングの夢歩きに入ります。各キャラの今後を尋ねて、それをもとに夢歩きを演出してください。

<マスタリングガイド>

この節ではこのシナリオをプレイするにあたって参考になりそうなことについてまとめておきます。

サラドナムの意図

 このシナリオをテストプレイしたマスターから出る疑問の中で最も多いのが、いったいサラドナムは何のために誘惑を仕掛けてくるのか?ということでした。
 一番単純な答えは、単に人間が悩むのが面白くてそんなことをやっているのだ、という答えですが、実はその他にもいくつか考えられるサラドナムの動機があります。以下でそれについて考えてみましょう(ただ、こういったことを書くとかえって自由な発想を阻害する、という気もしますので、読まないほうがうまいマスタリングが出来そうだな、と思う人は読み飛ばしてください)。

 まず、"根の侯爵サラドナム"なる存在が、そもそも何なのか?ということについて考えましょう。この場合、サラドナムなる魔族が本当に実在する魔族なのか?という次元から考える必要があります。
 可能性の問題として、深い森の影の中に不気味な雰囲気を感じ取った人々が、そこに何か不気味な物の存在を感じ取り、それにサラドナムという名をつけた、ということは十分ありえます。森の不気味な雰囲気を擬人化した存在、それがサラドナムなる魔族の正体でありえるわけです。
 この説を採用するなら、実際はそんな存在はいないのですから、極限状態に追い込まれたPCたちが見た幻、がこのシナリオのサラドナムの正体であるわけです。
 もう一つ考えられるのは、あとわずかな命であると宣言された少女の無意識下のおびえと無念さが、サラドナムという想像上の存在の形をとり、実体化したという考え方もあります。この場合、プレイヤーのロールプレイ次第でそれが明かされる、という展開を採用してもよいでしょう。

 実際にはいないかもしれないという説と、実体として存在するという説の中間として、実在するのだけれど、このシナリオに出てくるのはPCたちの幻にすぎない、という考え方もあります。この場合、幻であるというのが明らかになった後のエンディングの夢歩きで、サラドナムの実物を出してもよいでしょう。
 大技としては、それまで想像上の存在に過ぎなかったサラドナムが、このシナリオの途中で実体化した、という展開もありえるでしょうね。

 また、サラドナム実在説を採用する場合でも、森の不気味な雰囲気の化身がサラドナム、であるとするならば、同じ存在が場合によってサラドナムと呼ばれたりノースレルと呼ばれたりタンローズと呼ばれているということもありえるわけです。この場合、少女の無念さ(またはアルの後悔やジェスの不安)によって呼び出されたのでサラドナムという形で実体化した、といえるわけです。

 いやしくも深淵のゲームマスターを志すならば、シナリオにサラドナムと書いてあるからといって、それが本当にサラドナムなのかは誰にも分らない、ということは常に念頭に置いていてください。

 さて、サラドナムが本当に昔人間であり、過去の事件により魔族になったというオーソドックスな説を採用する場合、サラドナムの動機は何なのか?ということについて考えてみましょう。
 一番ありえるのは冒頭に上げた愉快犯である、という説です。他に考えられるのは、ノイスやアルに深く同情したサラドナムが、憎まれ役を買って出ることで彼らの葛藤を軽くしてやろうと考えたのだ、とか、世界に絶望しきれないサラドナムが、人が信頼できる存在足り得るのかと試しているのだ、という考え方もありえます(ずいぶん甘い見方ですが、個人的に嫌いじゃありません)。

 まあ結論としては、上記のことを頭に入れておいて、展開次第でどれを使うか決めるというのが一番無難なやり方だ、と一応言っておきます。

▲蝓璽轡△良措

 このシナリオのキーとなるのはリーシアの描写、この一点に尽きるでしょう。演出法は二つある、と思います。一つはいわゆる正当派ヒロイン風に(悪く言えば無個性に)演出する方法、もう一つはあえてわざと崩す方法です。どちらで行くのかはマスターにまかせます(崩す場合、恐らくそれはリーシアの本心を隠すための術、であるはずです)。

L簡發について

各キャラの夢歩きに対する注意点などをまとめていきます。

・ノイス
 このキャラの夢歩きに関しては実はリーシアのことよりも昔亡くした母親の夢を中心に夢歩きを行うほうが(特に序盤は)有効です。  決して口にすべきではありませんが、隠されたテーマとしてこのキャラには"昔妻を亡くした悲しみに囚われすぎ、妻の面影を娘に投影してしまい、娘のことを本当に考えられなくなってしまっている父親"という素材があるのです。
 もしこのキャラが上手に演じられた場合、このPCがエンディングにおいてつぶやく台詞は"ありがとう"といったものになるはずです。

・アル
昔亡くした妹の幻影を常にちらつかせればこのキャラの夢歩きは問題ないはずです。妹とリーシアの面影を重ねてしまう、等の描写をいれてもグッドでしょう。

・ジェス
このキャラのオープニングの夢歩きはかなり代わったものであり、めんくらった方も多いのではないか、と思います。実はこれはこのシナリオを通してある夢歩きに関するテクニックを試してほしいという意図があるのです。
 そのテクニックとは、"全編を通してあるテーマと関連させ夢歩きを語る"というものです。この場合そのテーマ、とは"道を行く旅人"というものです。
 街道を旅していたら天気が崩れる、懐かしい故郷につながる家路を旅する、旅の途中に見た美しい景色を思い出すなど、全夢歩きを旅路というテーマで統一し、エンディングの夢歩きを以下のようなものにするのです。

青の海王
遠く離れても海は一つ。
波はいつか届くだろう。

その日の晩夢を見た
君はリーシアと旅路を歩いていた

いろんなことを話した
恋人のこと
夢のこと
きれいだった森の景色のこと
そして、明日のこと

歩いていると、道が二つに分かれていた

右を行くと、懐かしいルティアの待つ家に着く
そして、リーシアは左へ向かわねばならない

彼女は分かれ際に笑って言う
"さようなら、また、いつかあいましょう"

君は自分が泣いているのを見られるのが恥ずかしくて、
軽く返事をして背を向け旅立つ

歩いているとあの老人に会った

この旅の最初、あの夢で見た老人だ

なぜ泣いておるんだね、おまえさん
そうか、親しい人と別れたのか

だが、おまえさん前に言ったじゃないか
この道は
海にも通じている
山にも通じている
歩きつづけてさえいれば
道はいつかつながる、と

おまえさんが歩くのをやめさえしなければ、
いつか二つの道はつながるだろうさ

青の海王

遠く離れても海は一つ。
波はいつか届くだろう。



 エンディングの夢歩きを最初から決め打ちで用意しておき、それ以外の全夢歩きをその準備に使うというテクニックを一度試してみてください(これは私の好みの問題もありますので、このエンディングの夢歩きが気に入らなければ、オープニングの夢歩きも変更した方が無難です)。

・メジナン

何度も書いてきた事ですが、このキャラについては他のキャラとのからみを重視してください。それは夢歩きに関しても例外ではありません。

<シナリオライターあとがき>

 このシナリオは安産でした。そもそものプロットはNPCが誰か死ぬ、PCはそれを看取る、というただそれだけでしかないのですが、どういうわけかこのプロットの評判が良い。しかもテストプレイでも評判は上々ときてる。うーん、なぜなんでしょう?

 個人的には前の髪とか糸とかのほうが好きなんですけど、やっぱりある程度わかりやすいプロットのほうがとっつきやすいんでしょうかねえ。まあ、このシナリオは、マスタリングし易さでは最上の部類ですが、たしかに(そう意図して作っているので)。一応言っておくと、このシナリオの命は描写の美しさです。そこさえ失敗せねばまず間違いありません。

 ただこのシナリオには最大の問題がありまして、それはシナリオタイトルに反し

菫の花は青くない

ということなんですが。まあ、それは見逃してくださいな(笑)。

 さて、今回のシナリオもいろいろな人のアドバイスを受け、たくさんの作品を参考にしています。ここにその謝意を表します。

 最後に一言だけ
このシナリオを近衛柚さんにささげます。
貴女がいなければこのシナリオはうまれませんでした。