テンプレートNo.14「夢占い師」



 夢占い師は少年とは別の意味で深淵最強のテンプレートであり、私の知人の言葉を借りれば「深淵3大テンプレートのひとつ」だそうです。
 しかしながら、夢占い師は深淵でもっとも敬遠されるテンプレートのひとつではないか?というのは私の正直な感想です(まあ、あのはげのイラストのせいではないかという気もしますが)。これは大変にもったいないことです。これほど扱いやすく面白いテンプレートもほかにないのですから。夢歩きが深淵の最も魅力的なルールのひとつである以上、能動的に夢歩きが行え、しかも他人とそれを共有できる(=他人に自分の夢を見せられる)テンプレートが面白くないわけがないでしょう。

 さて、夢占い師の魅力について語る前に、まず占い師とはなにか?という考察をしてみましょう。私はある知人に占いの奥義について聞いたことがあります。それは「質問に答えないこと」だそうです。占い師の仕事とはお客の悩みに答えることでなく、お客の悩みを整理し、お客が本当は何を望んでいるのかを、お客自身に気づかせる事である、と彼女は言っています。私自身この言葉には感心させられ、多く得るところがありました。
 基本的には、深淵の夢占い師も占いを生業のしている以上、上記のような考え方にのっとってロールプレイをするものであると考えて良いと思います。つまり、夢占いという手法を元に他のPCの運命の解決の手助けをする、というのが夢占い師的やり方であろうということです。夢占い師にとって夢占いとは(つまり夢歩きとは)、夢という非言語的な媒介を共有することにより、その人の心の中にあるものを共に見、味わい、その人が自分の考えを整理する手助けをするものである、という整理が出来ると思います。
 ゲーム的なことを言えば、サブマスター的な役割をするテンプレートであるという理解がよいでしょう。ゲームマスターや他の魔術系のテンプレートを行う修行には最適のテンプレートであるということも言えます。夢占い師がいると、たとえ夢占い師自身は活躍しなくても、他のPCの動きが魅力的になる、というのは面白いことです。

 ついでといってはなんですが、夢占い師のようなキャラクターを演じる上での注意点のようなことを、2・3挙げておきたいと思います。
 まず夢占い師が持っている遠い声という運命は、彼自身の精神の不安定さの象徴であると私は捉えています。このような苦しみをのり超える経験が、彼を夢占い師たらしめている、そんな気がします。(ちなみにゲーム的にはこの運命は良い誘導となっています)
 つぎに、他人を助ける事を生業とする職業全般について言えることですが、普通この手の職業の人間というのはある程度以上人に深入りはしません。かならず、職業的に相談者に会うという形を守ります。相談者のために東奔西走するというのはふさわしい行いではありません。なぜなら、「共に居る」ということはその人の悩みにとって有意味ですが、共に悩むということは有害でしかないということを彼らは知っているからです。臨床心理学ではクライアントの相談事にあまりにも深く入りすぎ悪影響が生じることを「転移に巻き込まれる」といいます。No33の「死の乙女に従う夢占い師」というテンプレートは、対象にのめりこみすぎた夢占い師の末路を示していると思われます。たとえ冷たく見えても、自分の「分」以上のことに手を出すのは害でしかありません」
 最後に、夢歩きを他のキャラと共有する際、あまり夢の意味について語るのはカッコ悪いということを言っておきましょう。その夢についてどう思うかは、相手に語るよう促すものです。しゃべりすぎはプロらしくないです。

 持つにふさわしい運命は過去を説明する運命、たとえば27「滅びた貴族の子孫」、30「片手」、32「病魔」、78「傍観者の記憶」等だと思います。自分の過去を乗り越えられた経験によって、他人の悩みを占えるというのはロールプレイに説得力を持たせられます。逆にふさわしくないのは、17「忠誠」、24「近親憎悪」などです、自分のことに精一杯で他人を占うような余裕がなくなる運命はまずのでしょう。もしそういう運命を引けば、一人前の夢占い師になるための修行過程であると考えてロールプレイしましょう。