独我論(関連星座;青龍)



   実践編の第1回は独我論についてです。なんでこれが第1回に来るか、というと、青龍および原蛇はわかる人にはわかるけどわからない人には絶対にわからない星座らしいのですね、どうやら。
 まあ、話せばわかるっていうのは絶対にうそで、話してもわからないことっていうのは絶対的に存在します。というよりも話せばわかるっていうのがうそだ、っていう認識から他者の概念が産まれるのですが…。おっと、これは余談ですね。とにかく、わからないなわわからないなりに雰囲気だけでも伝えたい、っていうことで青龍、原蛇に関係の深そうな話題をしばらく雑学的に語ってみようかな、と思ってます。2ヶ月悩んで悟りました、私に出来るのはおそらくこの辺これが限界ですわ(存在そのものは語れない、それは言語の限界を超えている。しかし存在そのものを語れなくても、存在そのものの周囲をぐるぐるすることでそれはおのずと浮かび上がる。以上は私が勝手に師と仰ぐ河合氏の言葉です)。

 さて、独我論についてです。なお、千葉大哲学科教授の永井均氏の著作を読んでいる方はこの原稿読まなくていいです。青龍のイメージっていうのはあんなかんじです、おしまい。
 読んでない人のために説明すると、古典的な意味での独我論という言葉は、要するに世界に私しかいないかもしれない、という仮定のことです。他の人は全て私の見ている夢の登場人物に過ぎず、実は世界に存在しているのは私だけなのではないか?というのが最も古典的な独我論です。いろいろな人の話を聞いてると、わりと子供の時こういうことを考える人って多いらしいですね(そういえばマトリックスって映画もありましたね)。この辺のレベルでも青龍の雰囲気に近そうですね。
 この議論は裏を返せば、自分が見ているものは、本当に自分に見えているような存在なのか?という問に収束される議論なんですね。この論の根本的な問題点は、"世界は私の見ている夢なのではないか?"っていう文章の<私>ってだれなんだい?っていうことに答えられないことにあるんですよ。

 独我論が本当に言いたかったことは、世界に私しかいないかもしれない、とか、見えているものは本物じゃないかもしれない、なんていう夢のような話のレベルじゃないんですよ。もっと純粋な驚き、それは<私>の存在についての驚きなんですね。
 似ているっていうことを例えにしてみましょうか。例えば親子は似ているという風にいわれるし、猿と人間は似ていると言うことも出来る。包丁と刀は似ているかもしれないし、コンピューターと電卓は似ているかもしれない。でも、<私>から見ればそれらはみんな似たようなものなんです。猿も人間も包丁も刀もコンピューターも電卓も、すべてのものはただ唯一の点、つまり<私>じゃないと言うただ一点によって似たようなものだ、と言えるんです。この私というのはたまたまキーボードをたたいている在胡という一個人をさしていますが、この仮に在胡と名づけられた<私>にとって<私>じゃない存在は(この文章を読んでいるあなたもふくめ)、ただ<私>じゃないというただ一点のみで決定的に違うんです。
 もちろん、この文章を読んでいるあなたにとって<私>とはあなたのことに他ならないわけですから、書き手である在胡を含めそれらは似たようなものである、と言えるかもしれません。しかし、たまたま今この文章を書いている在胡であるところの<私>が、<私>とほかのものとがこんなにも似ていず特別である、ということに対する驚きとあなたが抱いている驚きは別のものです。
 重要なことは、これは決して本質的な意味では他人には理解されない、ということなんですね。たまたま在胡である<私>がほかのものと全然違う<私>に驚いたことは、<私>一人にしか通用しない驚きなわけですから。もしたまたまこの話が通じて、<あなた>とほかのものが全然違うという驚きを<あなた>が持ったとして、それは<私>とほかのものとが全然違うという驚きとは決定的に異なるんですよ。なぜなら<あなた>は<私>じゃないから。つまり、独我論の理解において真に重要なのは、"決して<私>の本当に言わんとすることが伝わってはならない"というこの一点なんですよ。


 独我論についてはこのくらい、ほんのさわりで、終えておきます。えっと、経験上独我論が何を言いたいかは約5割の確率で全く伝わらないらしいので、わからなくても気にしないでください。
 逆にもし独我論に興味がおありなら、是非永井均氏のご本をお読みになってください、何か得るところがあるはずです(私の話は全くわからんが、なんとなく面白そうなことを言っていそうだ、とお思いならなお読んでみてください)。講談社現代新書の子供のための哲学、もしくは勁草書房の<魂>に対する態度を推薦しておきます。

 さて、なぜ青龍とこれが関係あるんだ?とお思いかもしれませんが、今は雰囲気が似ていると思いませんか?とだけ言っておきますね。