アイラ:己が罪に怯える侍女
[運命1] 罪悪感
[運命2] 運命の出会い:異性
「罪人には罰を与えずにおかぬ、これが法なり」
・幼き頃の記憶 〜
幼い頃彼女はナターシャとの戯れの中でただの水だと思ってい
た薬品を彼女に誤ってかけてしまいます。その薬品は塩酸でナ
ターシャは顔の七割を火傷してしまいます。ナターシャの親は
怒りましたが、ナターシャの懇願によりアイラが罪に問われる
事はありませんでした。しかし、彼女は今もその罪悪感を抱い
たままナターシャに仕えています。
ケディス=ラモンテ:秘めき声を聞きし伝書使
[運命1] 忠誠
[運命2] 遠い声
「見た目通りとは限らない、しばしば真実は別のところにあり」
・悲しき声を聞く 〜
ケディスは小さい頃から非凡な能力がありました。それは他人
の心の声がなんとなく分かるのです。でも彼はそのことに幾ば
くかの後ろめたさも感じています。
ある日彼はその風貌から悪魔の子と周囲から恐れられていたナ
ターシャと出会います。しかし、彼の聞いたナターシャの心の
声はとても優しく慈愛に満ちたものであると共に、深い悲しみ
をも秘めたものでした。彼はナターシャと行動を共にするうち
彼女に忠誠を誓うようになりました。
ヴァイオラ=シャルロット:誰が人を待ちし騎士
[運命1] 待ち人の予感
[運命2] 噂
「遠く離れても海は一つ、波はいつか届くだろう」
・待ち人からの手紙 〜
ヴァイオラの夢にはいつもある女性が現れます。夢の中で逢うそ
の女にヴァイオラはいつしか恋心を抱くようになりました。しか
し、ヴァイオラは夢から覚めたときその女性の外見などを全て忘
れてしまいます。ただ、その女性の名だけは覚えているのです。
彼女の名は"ナターシャ"というのだそうです。
そんな彼の元にある日手紙が届きます。その差出人の名はナター
シャとなっていました。
ナターシャ=アルゲイテ:悲しき鬼面の姫
[運命1] 醜悪
[運命2] 予言〜黒剣:愛する者に裏切られる予言
「永遠と思えるものにも必ず終わりは存在する」
・逢いたいという言葉 〜
ナターシャは仮面舞踏会で影から見たヴァイオラに一目惚れして
しまいます。彼女は悩みました「こんな醜い自分が彼に交際を申
し込んだところで迷惑に違いない」と。しかしナターシャはこの
恋心を全く捨てきることが出来ません。ケディスに頼みヴァイオ
ラに手紙を届けてもらうことにしました。それからナターシャと
ヴァイオラの文通はケディスという優秀な伝書使の助けもあり、
滞りなく続いていきました。
文通を続けて2年の月日が過ぎたある日の彼の手紙には「逢いた
い」という言葉がかかれていました。
〜 ヴァイオラからの手紙 〜
親愛なる ナターシャヘ
小鳥の囀りの聴こえる春麗らかな日々いかがお過ごしでしょうか。
ナターシャ、じつは折り入って頼みがあるんだ。僕の家まで逢いに来て
もらえないだろうか?きっと、またかとお思いだろう、いままでもさんざ
んお逢い出来ないかと伺ってきたからね。でも、その度君は体調不良であ
るとか、近親の己日であるとかでいつも来れないでいた。
僕は君のことを信用している。しかし、周りの者は僕が遊ばれていると
いうのだ。僕もその様な友人の助言を聞いて怒りを覚えるけれども、不安
にかられないわけではない。だから、もしいつも手紙で書いてくれる通り
何を置いても僕の事を大切に思っていてくれるのなら..僕に逢いに来てく
れ。もし、今度逢いに来てもらえないのなら..もうこの文通は止めにしよ
うと思うんだ。
乱文失礼いたしました。
敬具
追伸 君がきっと来てくれると信じているよ。
シナリオ進行〜GMへ
まず、最初にPLに説明しなければなりません。このシナリオのPCは皆とて
も善人です。その事を確認した上で次のことを行ってください。
1.小道具〜手紙
ヴァイオラのPLに直接上の文章の手紙を書いてもらう、もしくは確認して
もらいましょう。(極力書いてもらってください)これはこれまでのプロ
ローグをヴァイオラに説明する意図もあるので必ず行ってください。
2.面接〜ヴァイオラ以外のPLに
ヴァイオラに手紙を書いてもらっているところで、他のPLを集めて面接を
行ってください。(個々にでも集団でも構いません)
ここで伝えなければいけないことは:
to ALL
*ヴァイオラがナターシャに逢ってくれと言って来るので、そこでどうし
ても貴方たちは行かなければいけません。
to ナターシャ
*ナターシャさんあなたは自分のかわりにアイラを逢いに行かせることに
します。つまり、ナターシャがアイラになりすまし、アイラがナターシャ
になりすまして逢いに行くのです。ナターシャさん貴方は今回ヒロインで
す。誰がなんと言おうとヒロインです。その代わり貴方は自分の身を一番
厳しい状況に追いやらなければなりません。あと一つあなたは善人な今回
のPCの中でも一番善人です。聖母のような慈愛の心をもっています。
to ケディス
*ケディスさん貴方は今回物語の進行役として重要な任務を負ってます(
PLとして)あなたはそれぞれのPCの考えていることがほぼ分かります。伝
書使として色んな人に接触し、思いを運んであげてください。
to アイラ
*アイラさん貴方は「運命の出会い:異性」を持ってますね最初に言って
おきます。その相手はヴァイオラです。これだけは絶対に曲げれません。
そして貴方にはその事が否が応にでも分かります。そして貴方の心が惹か
れていきます。このシナリオ貴方がこの運命の出会いを軽視してしまうと
何にも楽しくありません。極めて重視してください。
2.面接:ヴァイオラ
ヴァイオラの面接で彼に噂が立っていることを告げてください。そのせい
で君はあんな手紙を書いたんだと。その噂とは「彼がもういい年だから結
婚するのではないか」といったものです。彼はある日親に呼ばれ、「結婚
相手を連れて来いそうでないのなら、近日中にお前を結婚させる」と言わ
れます。
3.テーマカード:
「炎は生きるが故に燃え広がっていく、
生きるが故に他者を焼き尽くそうとするのだ」
4.季節と国設定
このシナリオでの季節は春です。この国では春に満開に咲く花々が多数有り
「花の国」という別名で呼ばれるほどです。このシナリオでは所々にたくさ
んの花を描写してください。そして、その美しさを大いに語ってください。
(物語の冒頭に情景描写をしておくとPLが演技をしやすくなります。)
これは、アイラと花をかけあわせるためです。そしてナターシャの心をより
惨めにさせるためです。
また、この国はとても平和です。ほぼなんの問題もないといっていいほどか
もしれません。王政でそれぞれの領を貴族が世襲で治めています。
5.オープニング後:
オープニングは個々人の設定を適当に脚色してやってください。
その後物語はケディスが手紙を受け取るところから始まります。このシナリ
オは基本的にGMはPLの言うがままに任せてください。あなたがやるのは:
・夢歩き
・情景描写
・NPCの演技
・(必要ならば)イベント
・PLへのレスポンス
のみです。
6.イベント:
物語の途中であまり面白くない展開に行きそうになったら魔族からお呼び
の声をかけてあげましょう。例を二パターン上げておきます。
しかし、出来るだけこれらは使わないようにしてください。
・ナターシャが簡単にヴァイウスを譲りそうになった:
これは問題です。しかしかなり確率高そうです。この時は魔族からナタ
ーシャに次の誘いをかけてください..
「お前がアイラを殺せば、君の顔を君の望むようにしてあげよう」
・アイラが簡単にナターシャにヴァイオラを譲りそうになり、ヴァイオラ
もナターシャを簡単に受け入れた:
これも問題ですね、この時はアイラに疑問を抱かせましょう。
ナターシャが心から幸せを感じた時点で、アイラの罪悪感がなくなります。
運命が一つなくなったので新たな運命を..ここで彼女に与える運命は「過去
に関わる疑念」です。疑念の対象はこうです。
「あの時、本当に私のせいでナターシャが傷ついたのかしら?」
彼女に夢歩きで囁いて上げましょう。
「今までのことはあなたの運命の出会いを不意にさせるための策略だった
のでは?」
7.クライマックス
この物語のクライマックスを用意しておきます。それはヴァイウスの結婚
です。ナターシャ達が来て3日後(長いと思ったら2日後でも良いです。)
ヴァイウスは結婚します。その選択肢は大きく分けて三つです:
・アイラと結婚する;ただし、アイラの正体がばれた場合、結婚はご破算に
なります。この時代、身分違いの結婚は許されません。正体がばれた彼女と
結婚する場合、ヴァイウスは家を出なければいけません。
・ナターシャと結婚する;ただし、周りから大反対されます。親、友人、領
民、親族全てに反対されます。この選択肢は駆け落ち等になるでしょう。
・親の選んだ相手と結婚する;どちらも選ばなければここに落ち着きます。
いづれにしろヴァイウスは誰かと結婚します。どうしてもヴァイウスが親の
言うことを聞かず、結婚しない場合、父親は怒りのあまり心臓発作で死にま
す。ちなみにこの国では結婚をしていない者は領主として認めてもらえませ
ん。
ヴァイウスが結婚するとき、もしくはその前後等の時期をもって、この物語
のクライマックスとします。(PCの話し合いに決着がついたときといっても
良いでしょう)
8.エンディング
次に私がこのシナリオで語りたいことを記します。もしあなたがこれを気に
入ったならこの事を胸にエンディングを行ってください。
(個々のエンディングの前もしくは後ろにこれをそのまま読んでも構いませ
ん。ヴァイウスのエンディングが結婚式場ならこれをこのまま神父に読ませ
てください。)
「炎は生きるが故に燃え広がっていく、
生きるが故に他者を焼き尽くそうとするのだ」
人は生きるが故に、他者を傷つけてしまう。しかし、傷つくことも傷つけら
れることも、そんなにいけないことだろうか?
人生には選択を求められるときが多くある。時にそれはとても残酷なものか
もしれない。
君は過ちを犯すかもしれない。
誰かを傷つけるかもしれない。
自分が傷つくかもしれない。
一方の幸福が一方の不幸かもしれない。
誰も救えないかもしれない。
どの選択肢も絶望かもしれない。
逃げてしまうこともあるだろう・・。
しかし、忘れないで欲しい。君がそこに厳然と生きていたことを。そして、
思い返して欲しい。今君が厳然と生きていることを。
人は生きるが故に、他者を傷つけてしまう。しかし人は傷つき、傷つけるが
故に他者を許せるようになるのだ。