星座考察  〜はじめに〜



 以前私は深淵の魔法に関する論考の中で"深淵における魔法の使い手たちをPCとする場合、彼らのロールプレイにおいては、属する星座らしさが要求される"といったことを述べました。しかしながら、では個々の星座らしさとはどのようなものであるのか?といった点については、先の論考では私は一切言及しませんでした。これにはある明確な理由が有ったわけですが、しかしあの原稿を発表して以来、個々の星座らしさとはでは具体的にどのようなものなのか?といった話題をふられることが多くなったのも事実です。やはり魔法に関する論考を発表した以上、個々の星座についての考察にふみこまないのは中途半端のそしりを免れえないものなのかもしれません。
 幸い、深淵に関する私の論考の中のあるシリーズ(運命考察のことです)が一段落したことでも有り、個々の星座の内実に関する考察を開始するには丁度良い時期なのかもしれません。私の手にあまる部分が有るような気がしないではないものの、自分なりの星座解釈についてのシリーズをここに始めることにしたい、と思います。

 さて、シリーズを始めるにあたって個々の星座の内実に踏み込む前に、このシリーズの前提について話したいと思いうます。

 まず、大前提となる命題がひとつあります、それは深淵においては"星座において扱われていない素材は、ゲームにおいて扱うべきではない"というものです。この理由は簡単で、深淵はPCの無意識の領域の描写を夢歩きにおいて行っています、であるならば、語り部においてふさわしいメッセージの存在しない素材を扱おうという行為は著しく不利だ、ということになります。
 深淵の神話というのは、ゲームに用いるという点から考えるとよくできているものの、神話そのものとして考えるなら、明らかにいくつか欠けている要素が有ります。たとえばギリシャ神話と比較するならば、深淵の神話にはヘスティア(オリュンポス12神の1柱、オリュンポスの神々の長女にして炉の女神)にあたる星座は有りません。このことはすなわちゲーム的には深淵の世界においてヘスティア的な神性に象徴されるテーマは扱うべきではないことを示しており、また世界設定としてみるならばこの世界の住人たちはヘスティア的な要素を軽視(無視?)していることを示しています(この神話にはヘスティア以外にもいくつか明らかに欠落している要素(注1)があります)。
 もちろんこのことは深淵の星座にまつわる神話に関する設定の出来が悪いことを示している訳ではなく、むしろ逆なのですが(注2)、神話において語られない素材は直接は扱わない方が良いというのは覚えておいてください。
 上記の命題は逆に言えばキャラクターメイクにおいて各星座の持つテーマを象徴するような人物設定を行い、その星座(および関連する星座)の語り部を中心に夢歩きを行うと非常に円滑にセッションがすすむということを意味しています。ですからこのシリーズは魔導師のロールプレイに関してだけでなく、全テンプレートの表現、特に夢歩きの表現における手だすけになるよう意図され書かれています。

 次の前提としてこのシリーズでは各星座同士の関連について、対になる星座、敵対する星座、友好的な星座というものを想定し、それを元に議論を行います。
 八弦琴を除いた12星座はそれぞれ対になる星座を持ちます。ここでの対になる、というのはその2つの星座がある事象の2つの側面を表しているという意味です。 例えば黒剣と翼人は、始まりと終わりという世界の有り方の両側面を表す存在ですし、青龍と原蛇は切断と融合という世界の基本原理を表す存在です。議論を進めるにあたってこれら対になる星座、すなわち・黒剣と翼人・指輪と戦車・通火と野槌・青龍と原蛇・牧人と海王・古鏡と風虎はセットで考えると非常にわかりやすくなります(八弦琴については星座解説を書きません。これについてはテンプレート解説3を参照してください)。
 敵対するもしくは友好的な星座というのは、別に星座の神々の関係を言っているのではなく、星座の象徴するもの同士の関係という意味です。例えば風虎と野槌は、支配されるものと野にある野生という各々の象徴が遠い関係(敵対する関係)ですし、黒剣と風虎は支配するものとされるものという非常に近しい関係(友好的な関係)にあります。
 対になる・敵対する・友好的なという3つの視点は、他の星座と比較することで各星座の持つ意味をよりいっそう明確にするという意味があるのはもちろん、PCを夢歩きによって表現する時にそのPCの生きざまと各星座の語り部がどういう関連性があるのかが明確に出来るという意味が有ります。ごく単純にいうならば、そのPCの生きざまと敵対する星座の語り部であればそのPCの生き方に疑問を投げかけたり否定したりするような夢歩きを、友好的な場合は応援するような夢歩きを行うと良いでしょう(あくまで目安ですが)。ちなみに最も要素が強いと思われる順に並べました。
 具体例をひとつあげましょう。例えばあるPCの設定・人格傾向を野槌に属するものとして設定した場合、プレイヤーはそのPCを表現するのに自分の抱えている何かについて悩み、迷うというスタンスでロールプレイするはずです。野槌にとって敵対する星座の筆頭として上げられているのは黒剣であり、親しい星座の筆頭は海王です。黒剣とは秩序を司る存在であり、例えば紫の黒剣のカードをこのPCが夢歩きで使用した時、迷いを断ち切り秩序に従うように(すなわち野槌的生き方を改めるように)夢は語るでしょう。また青の海王のカードを出すことは、悩み迷うという野槌の生き方を見守るというモチーフが語られるでしょう(もちろん状況によって細部は異なるでしょうが)。親しいとか敵対するというのはそういう意味です。注意しておきたいのは敵対すると書かれている星座がそのPCそのものに害を成すとは限らない、ということです。例えば私は野槌と古鏡を敵対すると設定しました、これは野槌的生き方にとって、相手の生き方を自らの生き方に重ねようとする古鏡的な生き方はあきらかに敵対するからそうしたわけですが、愛するものを持つというのは野槌的な哲学には敵対するでしょうが、野槌的生き方をするPCにとってそれはプラスになるやもしれません。

 各星座の解説の最後にはその星座の持つ意味を良く表していると思われる、役に立つかもしれない意味ありげなフレーズ集というのを設けています。これはたいした意味はないのですが、覚えておいて実際のゲーム中にさも意味ありげに用いるとなんとなくかっこよさげに見えるかもしれない、程度に思っておいてください(ほんとに無意味だな、こりゃ)。また、これだけではあまりにも無意味なので、各星座らしい夢歩き、もしくはPC紹介を最後に載せています。基本的にはこれは私の過去のシナリオなどからの転載です(新しく書いたのもありますが)。

 最後の前置きなんですが、この解説はかなり私の好みが入っています。私は野槌、翼人が好きで、戦車、青龍が嫌いです。この辺の星座の解説については反感を持たれる方もおられるかもしれません。
 また、牧人、青龍など私の手に余るような主題も12星座中には多くあります、この辺の星座解説は正直自分でも出来が悪いと思います。もし反論、意見があったり、関連するリンクをはったほうがよいという助言がおありでしたらおっしゃってください。できるだけ対応いたします。

 とまあ、長々と前置きが続いてきましたが、ようするにこのシリーズは”よた話”以外のなにものでもありません。各星座についての私が連想したことを適当に書き並べただけのものです。たぶん実用性はあんまりないでしょうし、正確さにも欠けています。まあ、適当な読み物、ぐらいのつもりで読んでいただけると幸いです(ですからこのシリーズでは私のほかのコンテンツとは異なり、参照文献のデータ−は載せてません)。

 さて、ではそろそろ本論に入っていきましょう。長旅となりますが、どうか最後までおつきあいねがえると幸いです。

(注1)深淵神話における無視されている要素については別項にまとめる予定です。さきに結論だけ言っておくと、深淵の星座には女性原理(ギリシャ神話で言うならば、ヘスティア、アテネ、アルテミス的な神性)がほとんど欠けています。
(注2)実は本当は、これらの要素は語らない方が良い、のではなく、これらの要素の欠如ゆえの物語、としてゲーム中に登場するはずです。