深淵用シナリオ「糸」



<シナリオのフォーマット>
このシナリオはあらかじめ用意されたキャラクター3名を用いてプレイするタイプのシ ナリオです。PCは3人用意しています。シナリオを全て読み終えて、自信のある方はリ エルをPCに加え4人のプレイヤーで行っても良いでしょう。プレイヤー間に経験の相異 がある場合は最も信頼できるプレイヤーにルシートを担当さすようにして下さい。逆に初 心者に最適なのはユーリです。その際、プレイヤー同士で絶対にシートを見せ合わないよう注 意させて下さい。その後質問の時間を十分にとり、プレイヤーがPCの理解が十分になって から、プレイを開始して下さい。

<シナリオ概要>

1、 小さな村の領主ルシート

物語の舞台は、北原に位置するラルハー ス辺境の小さな村です。この村を代々治め てきた騎士の家系であるファニス家は、あ る魔族の呪いを受けており、時折呪いを受 けた子供が産まれることがあります。現在 の領主ルシート・ファニスの妹であるリエ ル・ファニスも生まれつき呪いを受けてお り、介助なしには歩くこともできませんし、 満足にしゃべることもできません。
代々ファニス家では、自らの家系が呪わ れたものであることを隠匿してきました。 村を治めるにあたり、村人の不信を招くの は困った事態を招きかねないからです。 そのような理由で、リエルは屋敷の地下 室で誰にも知られずに育てられました。彼 女の存在を知っているのは、ルシートと執 事のグレッグ、それに村の外から雇い入れ たメイド達だけです。
6年前に両親がはやり病でなくなり、ル シートが後をついでからも、彼はそれなり に良い領主として村人の信頼を勝ち得てき ました。
しかし、ここ2,3年の間不作が続き、 村は不景気な状態が続いています。さらに 間の悪いことに深夜執事に連れられて散歩 をしていた(さすがに多少は運動をしない と死んでしまいます)リエルが村の若者に 見られ、領主が魔族を信仰しているとのあ らぬうわさが立ってしまいました(ずっと 地下室で育てられ真っ白な肌をしたリエル は確かにある意味魔族的な美しさを持って います)。

2、 退魔の技を鍛えしものユーリ

ルシートにとって間の悪いことに、退魔 師の結社に属する者がその噂を耳に入れて しまったのです。退魔師の結社は魔族と戦 うことを宿命づけられた者が集いし場所で す。彼らはその噂が事実であるか調査の者 を派遣することにしました。
白羽の矢が立てられたのは、まだ若い少 女であるユーリ・セイレスでした。彼女が 選ばれたのは、そもそもが、あまり彼らが この噂を重要視していなかったためでもあ ります。異常なほどの魔族への憎しみを燃 やし、度を超した熱心さで任務にあたる彼 女に、少し休養を取らせよう、そう彼らは 考えたのです。
こうして、ルシートにとっては運の悪い ことに、魔族とそれに関わる者(魔族の呪 いを受けた者含む)全てに憎悪を燃やす退 魔師ユーリが彼の村を訪れることになった のです。

3、 黒騎士ケイド

この物語の舞台であるラルハースの 隣国にユラス男爵領という国があります。 その国を200年以上にもわたり治めてい るのは、「北原の魔人」との異名を持つユ ラス男爵です。
ユラス男爵領はまた、黒騎士団という勇 猛な騎士団の存在でも勇名を知られていま す。他国にとって脅威なことに、ユラス卿 は自らの領地の統治のみには満足しておら ず、つねに他国への侵略の機会をうかがっ ており、陰謀と共に黒騎士達を各地へ派遣 します。
ある時、いかなる手段によってかは定か ではありませんが、ユラス卿が呪われし娘 リエル・ファニスの存在を知りました。強 い呪いはまた、その方向性によっては祝福 にも転じる、そのことを知っているユラス 卿は、その娘に興味を持ちました。そして、 その村の出身者が自らの部下にいるのを思 い出し、黒騎士ケイド・カーチスに任務を 与えたのです。

4、 運命の者集いし時

 この様な経緯で、PC達は館に集まりま す。物語はここから始まります。

<シナリオについての注意点>

このシナリオは、基本的には舞台に全員 が集まってからは、プレイヤーの選択次第 でいくらでも変化しうるシナリオです。逆 に言えば最も重要になるのは、各々のPC 達の行動指針を可能な限り速く明確にする ことです、これを心がけて下さい。

<PC紹介>

小さな村の領主ルシートファニス 
運命:[8]変わり者の親族−妹(呪い)
   [87]罪悪感 
年齢 22歳
<解説>
 彼は今ラルハースの辺境の村を領地に持 つ騎士です。彼の家系が代々村の領主となってお り、彼も両親が流行病で死んだ8年前より領主と なって、領民のために尽くしてきました。彼には、 8つ下のリエルという名の妹がいます。ルシート の家系は実はとある魔族に呪いを受けており、ご くたまに呪われた子供が産まれてきてしまうこと があります。妹も生まれつき呪われていて、彼女 は支えなしには歩くこともできませんし、まとも にしゃべることもできません。
 ルシートの両親はリエルを館の地下牢にて育て ました。呪われし者を家族に持つ領主では、領民 に受け入れられないでしょうから。
そして、村人に知られないよう、こっそりとリ エルは育てられました。リエルは今もしゃべれず、 歩けないままです、週に3日程執事が世話をして 外に深夜散歩に連れだしている他は、ずっと地下 牢で彼女は過ごしています。ルシートはリエルの ことを妹として、とても愛しく思っています、彼 女も毎日ルシートがリエルを訪れるのを楽しみに しているようです。しかし、実際問題生活の負担 となっているリエルを思わずうとましく思ってし まうときもあり、そのことに対して罪悪感を抱い ています。
体格08/02 筋力16/05 反応13 /04
知性08/02 意志10/03 社交14 /04
生命力22 精神力16 行動値10 縁故 16

防具:騎士鎧(2)
吸収値8ペナルティ16
防御部位全身二重

技能 言語(交易語1) 夢歩き1 乗馬5
   社交知識(貴族6)地域知識2
 
武器/戦闘技能

技能名  技+修=判定 効果  防御   硬度
回避   2−16=−14
格闘   1+0=1  0打
鎧通し  1−1=0  3/4  1   5
片手半剣 5+6=11  3    4   20
騎士盾  4+4=8(防)    7   35
     4+1=5(攻)1打 

所持金 金貨30枚 銀貨600枚
装備  騎士鎧 片手半剣 騎士盾 鎧通し
  馬 執事のグレッグ よそ者のメイド3人 
縁故 馬 3 片手半剣 3 グレッグ 3
            リエル 5 村 3 メイドたち 2

執事のグレッグ 
全能力値 06/02
生命力 12 精神力 12 行動値 06
防御値 02 回避値 02 技能値 02
縁故 ルシート4
運命 [17]忠誠
 
   〜悩める兄の夢〜

信じて待つべし
いずれ継ぐべき者がここにくる


「兄さん、こっちよ、早く来てってば」
草原の中で妹が手を振る、心地よい風が頬をなでる
もちろんあなたにはこれが夢だとわかっている
わかっていてもあなたは妹に向かって手を振り返す
「おお−い、今すぐ行くよ−」
そう、これは至福の時間
夢の中にしかない兄弟2人の至福の時間

「ルシート様、ルシート様・・・」
執事のグレッグがあなたを起こす
傍らには安心しきった顔の妹の顔がある
「そうか、あのまま寝てしまったのか・・・」
「あ−、うーああー。」少女の声がする
「ごめんよリエル、起こしてしまったかい?」
そういって、あなたは妹の頭をなでる
言葉もしゃべれない、これが現実の妹
「旦那様…」
グレッグが困った顔であなたを見る
リエルのことが村人の話題になっているこんな時に
そういっている顔だ
「リエルは私の妹だ、くだらん噂など気にするな」
そういいながらあなたは部屋を出ていく

そう、わかってはいるのだ、今の状態が長くは続かないことは わかってはいるのだ・・・

信じて待つべし
いずれ継ぐべき者がここにくる

黒騎士ケイド・カーチス 
運命 [23]運命の出会い(異性)
   [91−2]魔族の刻印
年齢:26歳
 ケイドは、10年前にその武術の才を認められ、隣国ユラス男爵領に騎士として使えるようになりまし た。といっても、悪名高いユラス卿の下で働くのですから、両親は喜ぶはずもありません。それでケイド は両親に黙って村を飛び出してきてしまいました。
 今となっては、自分のことを両親にいわずに出てきたのは正解であったかもしれないと彼は思っていま す。ユラス男爵の騎士として様々なことをして手を汚してきたからです。初陣の時、兵士たちの熱狂にの 見込まれてしまった彼は、本来兵士たちを抑えなければならなかった立場でありながら、その義務を果た さず、あまつさえ略奪と陵辱に加わってしまうという暴挙を行ってしまったのです。もう、彼の手は汚れ てしまっています。彼は故郷には二度と戻らないつもりでいます。
彼は故郷で領主の息子であったルシートという少年と友人でありました。また、ルシートの屋敷で昔美し い少女を見かけたことがあり(ルシートは一人っ子のはずなのに)、そのことを今でも強く覚えています。
体格15/05  筋力18/06  反応11/03 
知性12/04  意志09/03  社交11/03
生命力24 精神力15 行動値 14 縁故16

防具 騎士鎧
   吸収値7 ペナルティ 14
   防御部位 全身

技能 夢歩き2 交易語 1 乗馬4 魔法知識 2 
   社交知識(貴族4) 

武器/戦闘技能
技能名  技+修=判定  効果  硬度
回避   2−14=−12
格闘   2+0=2   0打
      鉄拳     1打
片手半剣 5+3=8 3(両手4) 20
騎士盾 防5+4=9  8     40
    攻5+1=6   1打  
  大弓   3+0=3   4/5準備2
魔法
「黒剣:判定値2:刻印/闇のように黒い瞳」
剣の強化(2) 治癒(2) 支配の声(2)

「原蛇:判定値1:刻印/手の甲に鱗」
闇の投射(2) 深淵閉鎖(深淵の強度/5)

所持金 銀貨1600枚
装備 短剣、軍馬
縁故 ユラス男爵(4)、故郷(3)
魔族/黒き騎士の侯爵セジュミック(2)
ルシート(2)、?(5)
 
         
〜汚れし黒騎士の夢〜

我が名前を遠くより呼ぶ者は誰ぞ?

「だいじょうぶ、たすけてあげる。だってあなたはいいひとだもの」
闇の中で声がする
あなたは闇に向かって叫び返す
俺がいい人だと!
子供を殺し、女を犯した、この俺がか?!
はっ、笑わせるな
「ううん、あなたはいいひとよ、わたしにはわかるの」
お前は誰だ、なぜそんなことを言うんだ?
「あなたが私を呼んだから、あなたが暗闇の中で泣いていたから」
泣いていただと?
「ええ、だから私があなたを助けてあげるの」

主君であるユラス卿に呼ばれ、男爵の居城に向かう間も
昨晩の夢があなたの脳裏から放れない

「泣いていたか・・・、そうかもしれんな」
「えっ、何かおっしゃいましたか?」
隣の従者が驚いた顔をしてあなたを見る
「いや、独り言だ。それより男爵様がお待ちだ、少し急ぐぞ」
そういってあなたは歩を早める

「助けてあげる・・・」
風の中にあなたはもう一度その声を聞いた気がした

我が名前を遠くより呼ぶものは誰ぞ?

退魔師ユーリ・セイレス 
運命 [80]死者の呪縛−姉
   [44]際だった性格−魔族への憎しみ
年齢 22歳
 破魔の星座である戦車の魔術を治めた者は、野にある者であっても魔族との戦いに身を捧げています。 学院の戦車の塔の外であれ、自ら各地に結社を作り、彼らは魔族との戦いを続けています。ユーリがその ような結社の一員である退魔師となったのは、10才の時、二人きりの姉妹であった姉が、ある魔族の教 団によって、さらわれ、生け贄とされてしまったからです。その魔族の教団は滅ぼされましたが、彼女の 気持ちは収まりませんでした。
彼女は、それ以来魔族と魔族に関わる全ての者に強い憎しみを持っています。目的のためなら自分の命 も犠牲にすることもいとわないでしょう。
体格06/02 筋力09/03 反応11/03
知性09/03 意志12/04 社交09/03
生命力 15 精神力 21 行動値 12 縁故 11

防具 戦闘甲 吸収値2 ペナルティ0
   防御部位 なし

技能 夢歩き5 魔法知識6 言語知識(交易語1 上代語2
土鬼語2) 乗馬1 生物知識(人間1、植物1、動物2)
 
武器/技能名
技能名  技+修=判定  効果  防御  硬度
回避   1+0=1
格闘   1+0=1   1打
破魔の鎚矛2+5=7   3打 5 40
         対魔族5打
短剣   2+0=2   1   2    10

魔法 
「戦車:魔力3:刻印/赤い髪が頭髪に混じる」
拘束の印(召喚値/5) 封印((召喚値+30)/5)
太陽の召喚(昼間4/夜間20)深淵転化(1)
「黒剣:魔力1/護符」
治癒(2) 水晶支配(4) 水晶補充(4)

所持金 銀貨100枚
装備 短剣、魔法水晶2個、馬
縁故 愛用の鎚矛(3)、姉(5)、護符(1)
魔法水晶(計2) 
   

〜復讐に燃えし娘の夢〜

炎は生きるがゆえに燃え広がっていく
炎として生きるがゆえに
他者を焼き尽くそうとするのだ

「まだにおいがする・・・」

あなたには一つ癖がある
あなたは、常に衝動におそわれているのだ
手を洗いたいという衝動に

こうなったのはあの時から
あなたの姉が魔族の教団におそわれたあの時
「ただいまー」あなたがそういってドアを開けたあの時
血まみれの姉があなたに倒れ込んできたあの時
姉を抱きとめたあなたの手が血に染まったあの時
あの時から、あなたは手を洗うことをやめられない

そしてあなたは退魔師となった
魔族の使徒の頭を砕いた時
魔族の信徒どもの住処を焼き払った時
魔族を信仰する村を焼き尽くした時
あなたは、あなたの手の血のにおいが
ほんの少し消え去った気がするのだ

「まだにおいがする・・・」
あなたは惚けたようにまたつぶやいた
においはまだ、消えない

炎は生きるがゆえに燃え広がっていく。
炎として生きるがゆえに
他者を焼き尽くそうとするのだ

<導入 館へ>

導入は3人のPCが集まるまでを扱います。 オープニングの夢歩きについて各キャラク ターごとのキャラシートを参考にして下さ い。

1、ルシート
 ルシートは基本的に待っているだけです から問題はありません。村の様子をグレッ グに報告させたり、村人が陳情に来たりと、 村が不作で困っている、そういうことを印 象づけるイベントを起こすだけで十分です。 導入部の主導権は彼にありません。

2、 ケイド

ケイドは、ユラス卿から書状を隣国のと ある村の領主であるルシートに渡すように 命を受けます。書状の中身については別項 を参照して下さい。ここで注意して欲しい のは手紙はコピーするなりして封筒に入れ た状態で渡し、プレイヤーには中身がわか らない状態で渡さなければならないと言う ことです。書状の中身をいつケイドが知る のかは、このシナリオの展開を大きく左右 するポイントの一つです。
ルシートとケイドは昔の友人ですから、 互いを見れば思い出す可能性があります。 知性の基本値を目標に判定を行わせ、成功 すれば互いのことを思い出します。(思い 出してもらった方が、シナリオはうまく展 開します)双方とも失敗した場合は、グレ ッグがそれを指摘します。
2人がどの様な態度で互いに接するかは、 プレイヤー次第なのでここでは書きません が、一つだけわかっていることは、手紙の 内容を見たルシート(およびそのプレイヤ ー)が大きく狼狽すると言うことです。こ の時点でルシートのプレイヤーがケイドに 手紙の内容を見せることは99%ありえま せん。おそらくは、手紙の内容に従い、ケ イドに3日間湖の屋敷に逗留するように告 げるだけでしょう。

 3、ユーリ

ユーリは、結社から魔族の呪いを受けて いるという噂のある村についての調査を命 じられます。結社は、表向きは近くの遺跡 の調査であり、結社の館に逗留させ、協力 させてやって欲しいとゆう書状をくれます。 ルシートにしてみれば、「また迷惑な客 人が・・・」というところでしょうが、戦 車の結社のお客を表立って追い返すわけに もいかないので渋々逗留を許すことになる でしょう。
ルシートは手紙の遺跡のことを知ってい ますが、そこは完全な廃墟で子供が遊び場 にしているぐらい何もない場所です。

<ユラス卿からの手紙>
手紙にはしっかりとユラス男爵領の封蝋がされており、彼がユラス男爵の使いであるこ との正式な証明となっています。 手紙の内容はこうです。

勇名をもってなるラルハースの騎士ルシートファニス殿へ

我が国と貴殿の間で友好を結びたいと考えている。ついては貴殿の妹君をこの者の嫁に迎えたい、この者 は我が国で優秀な騎士として働いている者で、妹君とも釣り合いがとれていると思う。
例のことは心配しなくて言い、それは私が何とかする。
突然のことであろうから、即答はしかねると思う。3日間考える時間を差し上げよう。
良い返答を期待している。
                             隣国の領主 ユラス

     <戦車の結社からの手紙>
 ユーリが持ってくる戦車の結社からの手紙の内容はこうです。この手紙も封蝋がされて います。

    ファニス村の領主殿へ

貴殿の村の近くの遺跡にて、最近魔族の信徒どもが活動しているとの噂がある。そこでこの者を調査に 派遣したわけだが、ついては、この者をあなたの館に逗留させてはもらえないだろうか。大変勝手なお願 いで申し訳なく思っている。
しかし魔族は我らが人類共通の敵、必ずやあなたの暖かい支援が得られると信じている。

                     戦車の塔に属する退魔結社の長

<本編>

1、 ユーリ村を探索すること

 全員がそろってからの展開はかなり流動的になります。結局のところ、ユーリ(もしく はケイド)がリエルを発見するまで何が起こるか、というのが本編の内容ですから、展開 のほとんどはユーリがどう動くかにかかっています。
しかし、ユーリはいわゆる普通のファンタジーTRPGのように情報収集をし、他のP Cを見張り、夜中に屋敷を徘徊し、いつか真実に到達するでしょうから、彼女の行動に関 してはプレイヤーの自主性に任せましょう。
情報収集では村人から不作続きで困っていること、領主の館から時折美しい歌声が聞こ えること、領主が魔族の信徒であるという噂のあること、等を教えてあげて下さい。興味 を領主個人に向けることができれば、後は勝手に動いてくれるでしょう。

2、 ケイド深夜に美しき少女を見る事

ケイドに関しては注意が必要です。こちらでモチベーションを作ってやらないと行動が とれないでしょうから。
彼の場合の行動動機はリエルに対する興味です。
グレッグが訪れた最初の日の晩、彼は夜中、美しい歌声を聞き、目が覚めます。窓から 外を見ると、グレッグに手を引かれ裏庭を歩くリエルの後ろ姿を見ます。その姿は昔彼が 見た少女の面影があった、とでも伝えて下さい。プレイヤーにもよりますが、動かないタ イプの人であったら、「君はその少女に心惹かれるものがあった」とでも伝えてあげて下 さい。それで、ケイドもリエルに対する興味で動いてぐれるでしょう。夢歩きで刺激する のを忘れずに。
場合によっては、窓から飛び出して追いかけようと言う積極的なプレイヤーもいるかも しれません。しかし、初日にリエルとケイドが顔を合わすのはさすがにまずいので、見失 ったことにして下さい。すくなくとも、このシーンでケイドには、グレッグひいてはルシ ートへの不信が芽生えるはずです。

3、ケイド、実家を訪れること

もう一つ、ケイドには重要なイベントがあります。ケイドにたいする重要なイベントは 家族との再会というものがあります。村人は基本的にはケイドのことを知っていますから、 ケイドが帰ってきたという噂はすぐ村中に広まってしまいます。いずれ彼は自分の自宅を 訪れるでしょう。
 彼の家は今両親と兄が一人いるだけです。両親は驚きますが、基本的には彼を受け入れ てくれます。現在黒騎士として人に恨まれる立場の自分にたいする疑問をケイドに持たせ られればベストでしょう。

4、ルシート愛する妹に会うこと

  ルシートについてですが、いくら何でもずっと閉じこめっぱなしではリエルが病気にな ってしまいます。
やはりたまには外に出さねばならないでしょう。また、基本的に使用人達はリエルの世 話をするため、地下室と屋敷をしばしば往復していますし、リエルは兄と会うことをとて も楽しみにしています。ケイドが見つけられるぐらいの隙は、つくってあげられるように 誘導して下さい。

4、 注意点

テストプレイの経験では、ケイドとリエルが会うことになるのは、2日目の晩というパ ターンが最も多かったです。これは、初日の出会いのような状況がもう一度起きないかと プレイヤーが考え、ずっと見張っていることが多い、というのが最大の理由です。ルシー トのプレイヤーがわざとケイドがついてくる隙を作るのも2日目のきっかけを作る大きい 理由の一つです。
逆に、できることならば、ユーリがリエルと会うのは、後であるほど楽になります(あまり後にすると、怒りに狂ったプレイヤーが村人総出で追いかけてくるなどと言うこ ともありえますが)。
遺跡の話はそういった意味も含めてのミスディレクション(間違った方向への誘導)で もあります。大抵の場合、遺跡の調査で1日ユーリは使う羽目になります。

ユーリがリエルと会うきっかけとなるのは大抵の場合、使用人の誰かを通じてです。 人によっては拷問をしようなどと物騒なことを言い出す人もいますが、さすがにそれはプ レイヤーに言ってやめさせましょう。

5、 夢歩き

中盤を支えるもう一つの武器が夢歩きです。各キャラクターごとにどの様な夢を見せる べきかを検討していきましょう

・ ルシート
このキャラクターは3つのテーマで表します。ひとつはリエルへの愛情をテーマにした 夢歩きです(当然ですね)。2つ目はユラス卿にたいする不安です。妹の呪いをユラス 卿なら解けるのかもしれない、しかしあの悪名高いユラス卿に…というふうに悩んでも らいましょう。3つ目はユーリがもたらすであろう破局への恐怖です。
・ ケイド
ケイドは前半は罪の意識の夢、後半はリエルが語りかけてくる夢で押して下さい。ここ でGMに覚えていて欲しいのは、守る者(リエル)を持つことで、彼の罪悪感は消える ということです。リエルは彼に助けられることで、間接的に彼を救うことができるので す。
・ ユーリ
姉の夢および彼女の狂気の夢で中盤も押して下さい。彼女の狂気はそう簡単に消えても らっては困ります。

<終幕>

終幕は、ユーリがリエルを発見してからです。 基本的に騒ぎが起きているはずです。その騒ぎを聞きつけ、村人がリエルのことを見つけ てしまいます。ずっと地下にいて日の光を浴びていないリエルはある意味魔性のもののよ うにも見えます。それで村は大騒ぎになります。
ユーリが村人を先導し、ルシートらを狩だそうとする、というのが最も多いパターンで す。なんにせよ終幕はカタルシスを解消する場面です。カードとダイスに全てを任せ、展 開を楽しむぐらいのつもりでマスタリングしましょう。

<エンディングの夢歩き>

ここでは、筆者が行ったテストプレイでの各キャラクターのエンディングを紹介しましょ う。筆者のテストプレイでは、ケイドとリエルがかなり早いうちに出会い、ルシートとケ イドでリエルをユーリから守るというかなり変則的な展開になりました。
 結局ユーリの変質的な追跡によって、リエルは発見されてしまい、村人を扇動したユー リの山狩りを逃れながらユラス男爵領を3人で目指すも。追いつかれてしまい、ルシート が身を捨てて足止めをすることで何とか2人が逃げ切るという展開となりました。
1、 ルシート
我が運命はまもなく終わり、時代は変わってゆくだろう

体中に幾本もの矢を受け、激痛の中あなたは2人の姿をみおくった。
「幸せになってくれよ、二人とも・・」
それがあなたの最後の言葉となった。

2、 ケイド
この場所こそ我が故郷。
それだけは決して忘れない。
愛する少女を胸にかき抱きながら、ケイドは馬を走らせていた。はたしてユラス卿の望 みが何であるのかは、正直なところわからない。ただこの手の中の幸せ、これだけはもう 二度と失わない。

3、 ユーリ
夢さえも死をもたらす。
狂気こそ究極の平和のあかし。

「血のにおいが消えない・・」
そう呟いてユーリは馬に乗り駆け出そうとした、後ろから村人が声をかける。
「ど、どこにいくんですか、そっちは・・」
「ユラス領」
そうユーリは呟いた。
(あの2人を殺せば、きっとこの血のにおいは消える、そうなんでしょう、姉さん・・)