1,始めに
 このシナリオは深淵に慣れていない4名のプレイヤーを対象に作られています。プレロールドキャラクター4名を使用しています。

  2,あらすじ

 北原の小国ゼニス公国家は今滅亡の危機に擯していました。戦乱において力をつけてきた隣国との戦争の状況は日々悪化する一方でした。特に領主タイラス・ゼニスが病に倒れ、その一人娘ルーシア・ゼニスに実権が移ってからは状況はひどくなる一方でした。姫はけっして無能というわけではないのですが、いかんせん若すぎて、狡猾な隣国の戦略に抗し切る能力はまだなかったのです。
 そんな中ルーシア姫は一つの策を決意しました。公家領の近くにある魔の森といわれる魔ものが巣くう森の中には、鏡の公女エリシェが封印されており、その封印の管理をゼニス家が行ってきたのです。伝承によれば、ゼニス家の者の血筋の者が、ゼニス城を守れなくなればこの魔族は復活するとされています。ルーシア姫はゼニス家滅亡で、おそるべき魔族が復活するという情報を元に、自分の身を和平の材料にしようと考えたのでした。
 この策は着々と進み隣国の和平派の助力もあり、順調に進んでいました。和平の条件は姫と隣国の主の息子との婚姻でした。姫はそれを了承しました。PCの仕事は、和平派が用意してくれた会見の場まで姫を護衛することです。但し、戦乱の地をさけるため、魔の森といわれる危険な地を突破せねばなりません。

3,テーマカード

 「我をあがめよ。願望を形にするのだ。抑えてはならない。」

4,キャラクター

 セルバンテ 騎士
 運命:醜悪、極端な性格(モラリスト)
 縁故:基本+姫6、極端な性格3
 彼は、ゼニス家に使える騎士の家の長男でした。彼は幼い頃、顔面に大火傷を負っており、顔に醜い痕があります。彼は、それをコンプレックスに思い、また、それでも彼に優しかった姫に憧れています。彼は自分の思いが恋愛感情だと半ば気付いていますが、彼はそれを抑えつけるために、自我を強烈なモラリストとして形成しました。
プレイの指針:このキャラをロールプレイする際に頭に入れておいてほしいことは、彼の自我を形成する一番大きいものは劣等感である、ということです。武芸を究めたのも、騎士として出世してきたのも全てはこの劣等感ゆえです。そして劣等感を意識しないための精神の防護壁がモラルと言うことです。彼は自分の判断に根本的に自信をもっていません。彼の口癖は「王国の騎士として・・・」ですが、それはつまり自分の判断への自信の無さが根拠にあります。
 マスターは夢歩きでモラリストの仮面を捨て欲望に忠実に生きるように囁きかけてきます。いつ自分の本心に忠実になるか、そしてそれは遅すぎないのか?が焦点です。

 リック 弓兵
 運命 友なる動物(黒犬のアーシュ)、過去に関わる疑念、運命の出あい(異性)
 縁故:基本+アーシュ5(運命は後述)、異性(ルーシア)5

 彼は、どんな激しい戦場からでも必ず生きて帰ってきました。彼には噂がありました、奴には死に神が味方についていると。彼が一度戦場で負傷し、意識を失った時、彼が目が覚めると傍らにはアーシュがいました。その口は血で汚れていました。そしてこの様な、明らかにアーシュが守ってくれたというようなことが度々戦場であったのです。
 彼の住む町では、たびたび野犬に住民が殺されるという事件があり、アーシュがやっているのではないかとの噂が立ちました。しかし、かれのあまりにもすごい戦績と、その勇名により誰も非難できませんでした。
 彼は、アーシュとの出あいがどの様なものであったかを覚えていません。  (プレイの指針)このキャラは自分を守っているものが何か恐ろしいものであることに気づいていながら、それに立ち向かう強さをもっていないものです。このキャラはある意味典型的な若者です。真実にたち向かう強さをもたず、ただ日々を流されてすごし彼が、美しい女性との出会いにより大人への道を歩み始めるか?がテーマです。
 アーシュにたいしては真実に気づいていながら、それを見たくないんだ、というふうにロールプレイしてください。それをいつ変化させ対決するか?が焦点です。





 (マスター情報)実際にあった事件はこうです。(プレイヤーには伝えないでください)子供の時、リックが森で友達と野犬に襲われたことがありました。リックはその野犬の群の中に一際大きい犬がいるのを見つけました。どうもその犬がこの群のリーダーのようです。リックは錯乱してその犬に向かってさけびました。「友達は食べてもいいから、僕は食べないで!」
 その犬はにやりと笑い、「面白い子供だ、見どころがある。これより後艪gえよう」といいました。アーシュの正体は魔の森の下級魔族の1人です。リックの事が気にいりついて回っているのです。

 今、リックは漠然とアーシュがおかしいと思っていますが、真実に直面することの恐ろしさゆえ、アーシュの正体を調べようとしません。そしてそれこそがアーシュがリックを気にいっているわけです。そんな彼が運命の異性に出会い、どう変れるか、それが彼のテーマです。

 レイア・カルヴァン 通火の魔術士 
運命:依存症(ルーシア)、異形
  縁故:基本+姫6

 レイアはゼニス家に使える魔術士です。姫の幼小のころより教育係として姫と付きあってきました。
 その瞳ゆえ、子供の頃より家族の愛に触れられなかったレイアは、家族と言うものに憧れています。姫の教育係としてルーシアに接していながら、いつしか自分を頼るルーシアに家族の愛を求めていることに気付きました。今はもうレイアは、ルーシアに依存しているといってすら言い状態になってしまいます。
(プレイ指針)彼女は自分が生きられなかった人生を姫に投影しています。自分の夢を子供に託す母親を想像してみてください。姫への執着はそれゆえです。彼女はいくら取りすましても無意識では子供のままです。姫への態度は姉のようでもなく、友人のようでもなく母親のように接してください。
 彼女の課題は姫に投影した自分の夢をいかに自分に引き戻し、自分の人生として生きるか?ということです。


    3,導入

 各PCにオープニングの夢歩きをさせた後、全員を姫の城に集めてください。オープニングの夢歩きでは、荒廃した祖国、といったイメージを与えてください。
 城の応接室にPCたちは集められますが、各々それなりに有名人ですので、それぞれを知っています。
 しばらく待たされた後、ルーシア姫があらわれます。リックとは初対面です。姫は今の国の現状と、打開策として和平をする気であること、公国には魔族に関する秘密があり、それを取り引きの材料とする気であること。あなたたちにはその地までの護衛を頼みたい、ということを告げます。出発は明日早朝です。質問がなければ、ここでPCは城の用意された部屋に案内されます。
 解散した後、ルーシアはレイアにだけ、今度の和平の内容の全貌を伝えます。(レイアはとりみだすかも知れません)
 とくにしたいことがなければ、明日、早朝まで時間を進めます。

4,夢歩き

 後でもふれますが、このシナリオの夢歩き全編を通してエリシェの影をちらつかせてください。エリシェは鏡の公女としてその人の真実を移し出すとされる魔族です。各PCたちが抑圧している欲望をちくちくと刺激してください。数値データー等は世界の書P48を参照してください。

 夢歩き例
セルバンテの夢歩き:闇の中で声がします。本当にいいの。素直になれよ、姫が好きなんだろう。こうなってもいいのか?
 姫が何物かと激しく抱合っている情景、ベッドの上で狂おしく男女の営みをしている情景が闇の中にうかびます。(プレイヤー:その男に向かって殴りかかります)
 すると男が振返った。男は君の顔をしている。男は君に言った。変ってやろうか?
 全てのイメージが消えまた闇に戻る。闇の中君の肩に手が置かれこう言う。素直になれよ。振返ってみると、その男は君の顔をしている。

5,本編1,森まで

 魔の森は、城から1日ほど行ったところにあります。近くにリックの村があるので、夜はリックの村に泊ろうと言うことになります。
 リックの家族はあたたかく歓待してくれます。姫はリックの暖かい家族を見て、憧れるような目をしています。(リックとルーシアのシーンを作るチャンスです)
 この日の夕刻くらいまでに、全PCに
 ・ルーシアの様子(純粋に国を思ってる)
 ・ルーシアとレイアの関係
 ・セルバンテは姫に憧れている
 ・アーシュという犬はどこかおかしい

 ということを解らせてください。

6,本編2、魔の森で

 魔の森は5日で通り抜ける予定になっています。
 魔の森に行ってしばらくしてから全PCに、知覚で目標値12の判定を行わせてください。成功すると何かがこわれたと言うようなイメージがうかびます。夢歩きさせてください。
 実はこの時点では、城はすでに落城しています。何かがこわれたと言うのはエリシェが開放されたと言う感覚です。姫の不在=指揮者の不在が敵に洩れていたようです。今後、エリシェは実体となって、PCを愚翻します。
 PCたちと同様、姫もエリシェに欲望を刺激されています。姫の望みは、好きな人と平凡で幸せな家庭を持って生きることです。姫はリックの家庭の様子に憧れ、リックに好意を持ち始めています。もちろんエリシェによりその好意の持ちかたは加速されています。
 具体的にイベントが起きるのは、森に入って2日目の夜です。森の魔もの自体は入って初日、2日目はでてきません。この時点でマスターはPCたちの人間関係がぎすぎすしたものになるよう、誘導してください。
 いくら何でもおかしいと思って、エリシェについて知らないか記憶をたどるPCがいるかも知れません。そうした場合、目標値12で一般的なデーター、18で封印に関するデーターまで与えてください。

7,本編3、襲撃

 森に入って2日目の晩、魔ものの襲撃があります。この魔者は魔族に魂を吸われた人間の成れの果てです。半透明のゼリー状の体に、血管だけが浮かんでいるというものです。魔ものは5体襲撃してきますが、さらに集ってくる様子があります。データーは黒魔のものを用いてください。
 この戦闘自体は、大した意味はありません、意図はこのどさくさで姫をさらおうとするPCがでるかもしれないということです。そうした方向へ誘導してもかまいません。
 もし、プレイヤーが意識して行動しなければ、この戦闘でアーシュははぐれます。

8,本編4 確執 

 このシナリオのクライマックスはどこでPCたちの緊張の糸が切れるかです。ルーシア姫を中心に形作られた人間関係の糸の絡み具合は、時間と共にひどくなるはずです。一応、次の章に爆弾の爆発リミットを用意しますが、大抵の場合、それまでに緊張に耐えられないPCがでます。

 キーは、エリシェが復活している=国が滅んでいる、という情報にPCが気付くかどうか、です。ゼニス家の守る封印の話はルーシアから機会があればしてもかまいませんので、この事に気付くチャンスは全PCにあります。一番気付きそうなのはレイアですが。

 一番切れやすいのはセルバンテでしょう。強烈なモラリスト意識がどこまでブレーキになるかは見ものです。リックとルーシアの包容シーンなどを見た時にセルバンテがどう行動するかは考えただけでわくわくします。もし、故国が滅んだということを知れば、セルバンテがモラリストである必然性がなくなりますので、この時が一番切れる可能性が高いです。

9,終幕1

 奇跡的に、人間関係のくすぶりが爆発しなかった場合は以下のシーンを行ってください。

 4日目の夜、明日には魔の森を抜け切れるというとき、夜半ルーシア姫がこっそりとパーティーを抜け出します。知覚で15に達した人は気付きます。ルーシア姫は何物かに導かれるように泉の方に歩いて生きます。泉には、どことなく透明間のある銀髪の女性が待っています。
 その女性はルーシアに「あなたにお礼を言っておこうと思って。今まで私の眠りを守ってくれてありがとう」と言います。その瞬間、ルーシアは全てを理解し、悲鳴を上げます。

10,終幕2

 結果的にこのシナリオがハッピーエンドになる可能性はほとんどありません。クライマックスはどこで関係が爆発するかであり、キーになるのはそれまでの展開によるでしょう。エリシェを再度封印するというような展開にはほとんどなりえないとおもいます。

 テストプレイ時の例を書いておきます。参考にしてください。

 発端はやはりセルバンテでした。ルーシアとリックがいい雰囲気のところを見て切れたセルバンテが3日目の晩にリックに殴りかかったのです。その晩はレイアらに抑えられましたが、次の日の朝が問題でした。  セルバンテは、一般兵ごときが高貴な姫にふれるとは何事だ。と言いリックに詰め寄ります。それを見てレイアが、「国が滅んだのに一般兵も何もないでしょう」と言ってしまいました。(この時点ではレイアのみが祖国の滅亡を知っていました)
 それを知ったセルバンテの台詞が秀逸でした。「そうかー。姫はただの女になっちゃったのかー。じゃあもう僕は我慢しなくていいんだなあ」・・・完全に切れてます。
 セルバンテは馬でルーシアをさらおうとしました。リックがそれを止めようとしたので戦闘ターンに入りました。戦闘で瀕死状態になったリックは夢歩きによりアーシュの事を思い出し(この時点でアーシュとははぐれていました)、「アーシュ、助けてくれよ!」とアーシュを召喚しようとしました。それと同時にレイアの瞳により、セルバンテは失神状態に陥りました。
さてqAーシュはセルバンテの体に召喚されましたR士だったものはq茲蜷lよA還しました潟bクに言いましたbr> リックとセルバンテは手を組み激Cアは絶望し自ら命を断ちましたあわれにおもったエリシェはライアと姫の魂を融合しました
こうしてあらたな魔族がまた二名誕生したのですbr>